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2018年8月13日 (月)

メルカダンテ《捨てられたディドーネ》その2

このオペラの会場はインスブルックの歴史的旧市街から100メートルほど行ったところにあり便利で、歩いてやってくる人がほとんどのように見えた。小規模な街の良さである。

さて、オペラに話を戻すと、男声合唱が思いがけずたびたび活躍するので、なるほどやはりロッシーニのオペラ・セリアに似ているし、ヴェルディの《ナブッコ》が登場するまで20年弱なのだと思ったり。メタスタジオが18世紀前半にリブレットを書いてから、メルカダンテの初演までに、約100年が経過して、音楽のスタイルも変わったし、フランス革命を経て、民衆をどう捉えるかも変わったということが、このオペラにも反映されていると言って良いのだろう。
作曲家やリブレッティスタだけでなく、この日の指揮者アレッサンドロ・デ・マルキもさらにその延長上で考えているらしく、上演後のカーテンコールで2度ほど歌手たちが1人ずつ拍手を浴びたあとオケが演奏を始め、男性合唱が歌ったのである!オペラにもアンコールあるのか!
同じ曲をもう一度歌うビスは経験したことがあるが、カーテンコールに入ってからのは初めてでビックリ。なじみのない曲だからこれもオーケーと思うが、わざわざ合唱曲というのが興味深くもあった。主要登場人物が歌うコンチェルタートではない。
舞台というか演出は、やたらと回転する舞台だった。時代は第二次大戦前の北アフリカがヨーロッパの植民地だった時代なのかと思われた。
兵隊達は石炭だか何かを採掘しているようで採掘物をぐるぐる回るドラムに入れていた。
今回の上演はメルカダンテとトットラのスコアにさらに手を入れて編集しているようで最終場面が違う。この日の上演ではイアルバがディドーネに迫ると、ディドーネは隠し持った刃物でイアルバを刺し、ディドーネも刺されて相打ち、二人とも死んでしまう。女王の椅子に妹のセレーネが座って幕。
第二幕の開始部分もこの日の上演では、客席の間から兵隊たちが登場し、男性合唱を聞かせるのだがトットラのリブレットにそのような場面は見当たらない。
演出家と指揮者が話し合って?決めたのだろうか。
ディドーネ:ヴィクトリア・ミシュクナイテ(発音に自信はない)
エネア:カトリン・ヴントザム
ヤルバ:カルロ・ヴィンチェンツォ・アッレマーノ
オスミーダ:ピエトロ・ディ・ビアンコ
アラスペ:ディエゴ・ゴドイ
セレーネ:エミリエ・レナール
ディドーネは声は通るがアジリタなど様式的な部分はまあまあ。エネアは
それと対照的で、声は大きくはないのだが、様式感は良い。カーテンコールでの
拍手はディドーネがタイトルロールであったにもかかわらず、エネアにも随分の拍手が
贈られた。オケは一部ピリオド楽器を使用していたと思う。管楽器(金管も木管も)の表情で
味わいが違うことを実感した。当たり前だがオケも技量が高い方が満足度は高いし、指揮者がここぞと思うところで緊張感を高めたり、リラックスしたりの幅も広がる。
今日の上演、全体としては大いに満足であった。

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