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2018年8月24日 (金)

バイロイト祝祭劇場の音

バイロイト祝祭劇場の音について考えたことを簡単にまとめておく。 

周知のように、バイロイト祝祭劇場は、オーケストラピットの構造が独特で、観客席からは指揮者の姿もオーケストラ員の姿も全く見えない。演劇的に言えば、指揮者の棒さばきに気をとられることなく舞台に集中させる効果があるだろう。音響的に言えば、オーケストラボックスに蓋がかぶさっているような形なので、オーケストラの楽器の発するアタック音がほとんど聴こえず、弦であれ、木管であれ、金管であれ、フォルティッシモで演奏している場合でも演奏会場の空気をつんざくような鋭い音にはならず、ソフトで力強い音になる。

前に書いたが、そういうソフトでかつ力強い音のサポートにのって歌手の声は遮るものなく直接音が響く。高音の輝かしいソノリティもこちらはダイレクトに聴衆の耳に届く。ヴァーグナーのオーケストレーションは大人数であるからこれくらいの工夫があってちょうどよいだろうと思う。さらに、祝祭劇場は木をふんだんに使用しており、それもまろやかな響きの醸成に一役買っているかと思われる。

劇場が木が多い方が良いかと言われれば、それはレパートリーやオケの編成によるだろう。ザルツブルクのフェルゼンライトシューレは岩山をくりぬいたような劇場で岩というか石の一面だが、ここでバロックオーケストラの演奏が素晴らしく美しく響くし、また現代曲も良い。

バイロイトはヴァーグナー自身が自分の曲を上演するため専用に建てたのだからヴァーグナーのオペラに向いているのは当たり前と言えば当たり前かもしれないが、どういう意味で向いているのか、という点を少し考察してみました。


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