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2018年4月22日 (日)

イタリア語で読むウンベルト・エーコの『いいなづけ』

ウンベルト・エーコ著白崎容子訳・解説『イタリア語で読むウンベルト・エーコの『いいなづけ』』(NHK出版、1900円)を読んだ。

複雑なタイトルなので言わずもがなの説明をしておくと、『いいなづけ』はもちろん、アレッサンドロ・マンゾーニの古典。イタリアでも最も有名な小説である。ただし、これは長い長い小説なので、エーコが少年少女向けに要約した版の翻訳である。エーコの要約は、エーコによる作品へのコメントがところどころに入り、最後にはエーコからマンゾーニに対する究極の質問まであって単なる通り一遍の要約ではない。
さらに、この本の構成として、エーコの文章が日伊対訳になっていて、丁寧な語注がついているのだが、それだけではなく、章ごとに訳者白崎容子氏によるマンゾーニとエーコ版の相違や時代背景に関する解説・説明があって、マンゾーニ作品に対する二段構え、三段構えの噛み砕いた解説書となっている。エーコは現代イタリア語で書いているので、読み物として楽しみながら語学を学ぶという目的にも使えるし、てっとり早く『いいなづけ』のあらすじを知りたいという人にも役立つと思う。
エーコの文章をマルコ・ズバラッリ氏が朗読したものがダウン・ロード出来るようになっている。
これをきっかけにマンゾーニの『いいなづけ』を読んでみる人が増えるといいと思う。原作もナレーションの仕掛けが面白いし、この小説を読むことは、イタリア人やイタリア理解にとって欠かせないと思うし、小説の味わいとして、善悪優劣ではなく、イギリス小説などとは違った味わいを持つと思うからだ。

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