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2017年9月 2日 (土)

《ドン・ジョヴァンニ》

モーツァルト作曲の《ドン・ジョヴァンニ》を観た(プラハ、エステート劇場)。エステート劇場は、スタヴォフスケ劇場とも言うが、ここは周知のごとく、モーツァルト自身の指揮でこのオペラが初演された劇場である。

91日が2017/18年のシーズンの開幕であった。お目当ての指揮者や歌手や演出家があったのではなく、お目当ての劇場があって来たのだ。素晴らしい劇場である。内装が美しいだけでなく、サイズが小ぶりでモーツァルトにふさわしい。歌手が声をはりあげることにエネルギーの多くを奪われることがない。オーケストラも25人ほど。空間が大きすぎないから、これで必要にして十分。楽器や奏法の細部がどうのということはさておき、この空間でこんな風に鳴っていたのだと納得。

指揮者ヤン・ハルペツキーも、オケもこの曲をやり慣れていて、歌手のテンポやリズムが多少乱れても(歌手は結構演技をするのでそういう時が出てくるのもやむをえないかと)全く引きずられることはなくがっちりサポート。

演出はなかなかモダンで、歌手も所々バレエ的な所作をする。殺された騎士長は最後の場面以外にも時々舞台に登場し、ドン・ジョヴァンニの悪行をはたで見ている。ツェルリーナ(金城由紀子さん、ネットで調べると2012年よりプラハ国民劇場専属歌手とのこと)は、相当大胆にセクシーな身振りをさせる。具体的には、長めのスカートは履いたまま、赤いパンティを脱いだり、また履いたりする仕草が見られ、ツェルリーナの性愛が受け身一方ではなく、アクティヴに働く様を可視化しているのだった。

楽曲的に意外だったのは、ドン・ジョヴァンニの地獄落ちで終わりなこと。残された全員の重唱がない。この最後の6重唱をカットしたのはプラハ初演の後の、ウィーン初演での上演

であったらしい。モーツァルト自身の上演に両方の形があったこと自体が大変興味深い。

 

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