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2017年4月 4日 (火)

『ラフカディオ・ハーン』

工藤美代子著『ラフカディオ・ハーン』(NHKライブラリー)を読んだ。奥付を見ると1995年の出版である。

放送が元になっているせいか、平明な文章でスラスラ読めた。分量の制約もあるので、個々の章でここはもっと知りたいという点も出てくるが、詳しいことが知りたくなったら、例えば工藤氏の書いたハーンの伝記(3巻本である)を読めば良いのだろう。
この本はバランス良く、ハーンの生い立ち(ギリシア人の母、アイルランド人の父)、アメリカ時代、マルチニークでの転機、日本(14年間)を描いている。著者によれば、ハーンには漂白の魂というべきものがあって、一箇所にとどまっていることはできない。アメリカでもシンシナティでジャーナリストとしてデビューするが、そこで黒人女性と結婚し、その結婚が破綻してニューオリンズに行く。
若き日のハーンは、とりわけ人間関係において不器用で、周りと軋轢を起こしてしまう。強烈な自負心と他者の評価にギャップがありすぎたのも一因。
アメリカ時代に知り合ったエリザベス・ビスランドという女性ジャーナリストとの淡い恋愛感情や文通も興味深いし、日本に来てからも松江、熊本、神戸、東京と移り住んでいる。ただし、日本では松江で小泉せつという良き伴侶をえて、子供及び使用人も連れての引っ越しとなる。経済的にも恵まれたものとなり、何よりハーンは日本文化に共感し、全体として幸せな晩年であったことがわかる。

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