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2017年4月23日 (日)

『バッハ・古楽・チェローアンナー・ビルスマは語る』その1

アンナー・ビルスマ、渡邊順生著、加藤拓未編・訳『バッハ・古楽・チェロ〜〜アンナー・ブルスマは語る』(アルテス・パブリッシング、3800円)を読んだ。愉快な楽しさと、引き込まれるような興味深い話に満ちた本だった。

オリジナル楽器の名手ビルスマ(敬称略、以下同様)とチェンバロ奏者渡邊の対談がメインなのだが、ビルスマという人は話しぶりが、実に豪放磊落、構えず思ったことを率直に、しかもユーモアを交えて語る人なので、こちらもその場に居合わせたかのように声をあげて笑うこと1度ならずあった。

ビルスマは、学校秀才の反対で、むしろ先生の言うことを聞かず退学にもなって、夜間学校に通ったりしている。そう言う気質が彼にはずっと生きている、息づいている。音楽学校の教師が、通説を教えようとしても、彼は疑問を持てば、通説に従わず疑問を持ち続ける。

彼は音楽院卒業後、ネーデルランド歌劇場管弦楽団にチェリストとして就職。そこでもしょっちゅう遅刻し、『ローエングリン』上演の時など、劇場に行って見たら誰もいない、その日の公演はいつものアムステルダムではなくてユトレヒトだった!

翌年カザルスコンクールで優勝するが、チェリストを続けるかどうか悩む。そこへフランス・ブリュッヘンから電話がかかり、グスタフ・レオンハルトとも知り合う。

ビルスマはその後、オランダの名門コンセルトヘボウ管弦楽団に入団するが3年で辞めてしまう。その理由がふるっていて、ずっと「12人」や「18人」で同じ音を弾いているのは苦痛だから。

彼の好きな指揮者はフルトヴェングラー。フルトヴェングラーがコンセルトヘボウの指揮者だったらコンセルトヘボウの指揮者だったら彼はコンセルトヘボウを辞めなかったろうと。当時のドイツ人指揮者はオットー・クレンペラーだったと言うからちょっと驚き。しかもビルスマは、クレンペラーの指揮するベートーヴェンの交響曲は「つまんなくてね」。

他にはブーレーズはフランスものは良かったが、彼の振るシューベルトは何がやりたいのか今もさっぱりわからない、とのこと。

ビルスマがバロックチェロを弾き始めたのは1960年代半ばで、モダンチェロでブリュッヘンのリコーダと合わせるといつもピアニッシモで弾かねばならなかったが、バロックチェロでは普通に弾けるようになったと言う話もモダン楽器とピリオド楽器の音量の違いを考える上でなるほど納得のエピソード。

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