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2017年4月 8日 (土)

『名曲の真相』

佐伯茂樹著『名曲の真相』(アカデミア・ミュージック、1800円)を読んでいる。

この本は副題に「管楽器で読み解く音楽の素顔」とあるように、管楽器からみた各時代の名曲の姿を解説したものである。
そのうち評者は、バロック・オペラ及び古楽器に関心を持ちつつ読んだ。フルートのところでは著者は、バロック時代にはなぜベーム式のトーンホールのメカニズムを持たないか(つまりモダン楽器では転調や半音が楽に出せる)に関して、バロック時代には「調性ごとに異なるキャラクターを持つ」という「調性格論」というものがあったからだとする。バロック時代のフルートで演奏した場合、半音はクロスフィンガリングやフォークフィンガリングで穴をふさぐのでくぐもった音が多くなる。ニ長調やト長調は明るくなり、変ホ長調はこもった音の暗い色調となるのを踏まえてバッハらは調性を選択していたというわけだ。
バッハの時代のトランペットの解説も興味深い。低いところでは自然倍音だからドとソしか出ないのだが、クラリーノ音域と言われる高音域になると音階らしきものが演奏できるようになり、その部分を活用した。
楽器の格式の話もまた面白い。トランペットは古くから格が高く、例えばクラリネットは庶民的な出自で、パリの宮廷ではなかなか使用されなかったなど。
通奏低音に関しては、通奏低音を担当する楽器はチェンバロ、チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ(リュートの大きいやつ)など色々あるが、その共通点は最低音がCだということ(細かい例外は本書にあたってください)。
古典派時代に起こったホルンという楽器の変化、変革も実に興味深い。
古楽器・ピリオド楽器からモダン楽器への変化は、 概ね転調の多い楽曲の演奏に関して、便利で演奏しやすくなるのだが、そこで失われるものが皆無なわけではなく、その最大のものは音色であろうと古楽器・ピリオド楽器をしばしば聞くようになると思う。本書はバロックから20世紀まで扱っているので、興味のある部分から読み進めれば良いのかと思う。

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