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2017年3月 1日 (水)

《ベルファゴール》

レスピーギのオペラ 《ベルファゴール》を観た(初台、新国立劇場、中劇場)

カンディダという女性とバルドが恋仲なのだが、地獄からやってきた悪魔ベルファゴールは、カンディダの父に大金を渡し、カンディダとの結婚を申し込む。
ベルファゴールは人間の女性というものとの結婚がどんなものかを知るために地獄から派遣されたのだ。金を渡されたカンディダの父は、それなら私の妻をどうぞ、などと言うセリフがあって、冒頭からオペラ・ブッファの雰囲気が濃厚である。
形式的には結婚した後もカンディダはベルファゴールの愛を受け入れない。それどころか、スキを見つけてバルドと駆け落ちをする。
前半の喜劇的な部分では音楽は雄弁に状況を語っている。しかし後半、カンディダとバルドの恋愛感情の表現になると、ヴァーグナー以降の悪弊で、アリア的な曲がなく、メローディアスな快感が得られない。レスピーギももったいないことをしたなあ、と言う感じを勝手に抱いた。しかし、演じようによって相当、面白い劇であり、特にブッファなところは音楽的にも聞きがいがあると思った。
CDは入手困難であるし、Youtube にも画像なしの演奏が1つ上がっているだけであまり録音状態も良くない。やはり日本語字幕付きで見ると、音楽劇の劇の部分はとても良くわかる。つまり、どんなセリフのところにどんな表情の音楽が付されているかが分かるので、ありがたい。レスピーギのオペラはもっと見直されて良いのかもしれない。このオペラの初演は1923年であるから、プッチーニの《トゥーランドット》やベルクの《ヴォツェック》と近い訳である。20世紀のオペラの浮沈を考える際にも意義深い公演に出会った。

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