アンサンブル・レ・フィギュール「愛のかけら」
アンサンブル・レ・フィギュールという古楽アンサンブルのコンサート「愛のかけら」を聞いた(東京・初台、オペラシティ内の近江楽堂)。
近江楽堂というのは、初台のオペラシティの3Fにある小さなホールで、丸天井で、天井には十字の切れ込みがあり、さらには、アルコーブには舟越保武氏のマグダラのマリア像があり、明らかに礼拝堂などをイメージした作りである。座席120ほどでこじんまりとしており、演奏者と観客が親密な空間を共有できる。
アンサンブル・レ・フィギュールは、バロック・ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ、フラウト・トラヴェルソの4名の古楽器(ピリオド楽器)奏者からなり、この日は、フランス人カウンターテナーのポール=アントワーヌ・ベノス・ディアンが加わり、フランスのカンタータを歌った。
なぜフランスのプログラムかという点については、アンサンブル・レ・フィギュールの面々が日本出身だがパリ在住で大半がフランスで学んだ経験をもつということもあるのだろう。
曲目は第一部が
N.ベルニエ 序曲 カンタータ「夜明け」より
M.ランベール 宮廷歌曲「優しく誠実ないとしい人」(いとしい人というのが女羊飼い、という牧歌の伝統を踏まえている)
N.ベルニエ 「アマントとリュクリーヌ」
休憩10分を挟んで
第二部は
L.クープラン 前奏曲ト調
M. ランベール 宮廷歌曲「私の瞳よ、どれほどの涙を流したのだろう」
L.N.クレランボー ソナタ ラ・フェリシテ
L..N.クレランボー「ピュラモスとティスベ」
クープランなどは、チェンバロの独奏だったりするが、主となるのは、カウンターテナーが出てくるカンタータである。
ベノス・ディアンの声、発声は実に自然で、引っかかるところが感じられないし、表情づけ、音楽的なアクセントも完成度が高い。ヴァイオリンやフラウト・トラヴェルソも弾むむところはは弾み、リズム、音色ともに音楽的楽しさを享受できた。ヴィオラ・ダ・ガンバは、小ぶりのチェロという感じだが、脚の間に挟み楽器が床についていない。また、弓の持ち方が下からもつ感じで異なっている。もっと多人数の中では別として、この日は奏者は4人だったので、これがヴィオラ・ダ・ガンバで、その音色(案外低い音が響くーもしかするとホールのせいでもあるかもしれないが)がはっきりと認識できて興味深かった。通奏低音を担当することが多いが、対位法的な受け渡しで、ヴァイオリンやフラウト・トラヴェルソと同じ旋律を軽やかに弾くこともあるのだった。チェンバロは楽器がkubota 2006 と書かれたもので、京都でのコンサートで使用された楽器(ネットで拝見)とは異なるようだった。
個人的には、クープラン以外、これまで馴染みのない作曲家だったが、ベルニエもランベールも17世紀、18世紀の音楽であり、ヘンデルやヴィヴァルディ、あるいはそれ以前の作曲家と共通の音楽語法を持っており、親しみを感じた。バロック音楽の領域の広大さを感じたし、 プログラムに対訳で歌詞が掲載されていたのは大いに役にたった。
また、楽曲の演奏前にフラウトの石橋氏が簡潔な解説をしてくれたのもとても良かった。
この演奏会の存在を知らせてくれた知人に感謝。
この日、配布されたチラシを見て、今更ながら驚いたが、バロックや古楽器のコンサートは東京圏に限っても随分多いのだ。個人的には、ごく簡単な装置のセミステージで良いのででバロックオペラがもっと上演されるようになったらなあ、と思う。フランス・バロックで言えば、できれば、バロック式のバレエが伴えば言うことなしであるが。。。
それはともかく、この日のコンサート、素敵でした。
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