レザール・フロリサン、《イタリアの庭でー愛のアカデミア》
ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンの演奏会を聴いた(サントリーホール)。
演奏団体と曲目の関係が少しややこしいので簡単に説明しておこう。レザール・フロリサンは、指揮者クリスティが1979年に設立した声楽と器楽のアンサンブルである。
今回の上演演目は《イタリアの庭でー愛のアカデミア》と名付けられているが、特定の作曲家が作った単独の曲ではない。初期バロック(アドリアーノ・パンキエーリ、オラツィオ・ヴェッキ)からストラデッラ、そしてヘンデル、ヴィヴァルディ、そしてチマローザ、ハイドンへと至る一種のアンソロジーなのだが、そこに共通のテーマを一本走らせている。それが愛なのだが、愛のアカデミアとは何か。
オラツィオ・ヴェッキの曲が「シエナの夜会」という曲なのだが、シエナのアカデミア(知識人のクラブのようなもの)の集まりのために書かれ、デンマーク王クリスティアン4世に献呈された。
各作曲家の歌の歌詞は、愛の学校という性格を持つものと、叙事詩『オルランド・フリオーソ(狂えるオルランド)』に関わるものがよりあわさっている。オルランドも愛のためにおかしくなるのだから愛のテーマの変奏とも言えるのだが。
以上の説明からおわかりのように、もともとは独立した別々の曲を演奏者が関連付けるように編集して連続的に演奏しているのである。セミ・ステージの形式で、舞台には2つの階段のついたブロックがあり、そこを歌手が登ったり降りたり、腰掛けたりすることで登場人物的なニュアンスを醸し出していた。
愛のテーマが様々に繰り広げられるのも興味深いが、バロック音楽からチマローザやハイドンになると音楽の表情が変わるのも如実にわかって面白かった。そういう意味では音楽史を実感的に学ばせるプログラムとも言える。
楽しい愛の学校であった。
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