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2016年8月28日 (日)

《Il templario》1

オットー・ニコライのオペラ《Il templario》を観た(ザルツブルク祝祭大劇場)。全くの演奏会形式で、オーケストラが舞台上にいる。
この作品は2000年代に復活上演されるまで140年間忘れられていたものなので、調べたことを少し書いておく(英語のwikipediaが主要な情報源、CDのリーフレットも貴重な情報源であるが今手元にないので後日情報を加筆するかもしれない)。
オットー・ニコライはドイツ(プロイセン)の北の都市ケーニヒスブルク(現在はロシアのカリーニングラード)に生まれた。1810年生まれなので、ヴェルディやヴァーグナーと3つしか違わない同時代人である。彼は、ローマに留学してイタリアオペラにはまってしまい、ほとんどのオペラ作品をイタリア語のリブレットに書いたのである。
《Il templario》 もイタリア語のリブレットだ。
ストーリーはなかなか複雑で、スコットのアイヴァンホーを原作としているのだが、幕の始まる前の事情を説明しておかねばならない。
 背景
 1194年のイングランド。ノーマンコンクエストの勝利者たちは、アングロサクソンを見下しているし、ましてやユダヤ教徒やイスラム教徒の奴隷はものの数とも思っていない。
 アングロサクソンの王統を復興させようと目論むチェドリーコ(セドリック)は、ロヴェーナ姫をやはりアングロサクソンの王家の血を引くものと結婚させようと思っていたのだが、息子のヴィルフレード(アイヴァンホー)がロヴェーナに恋してしまい計画に暗雲が立ち込める。父チェドリーコは息子を勘当し、息子は十字軍に加わる。
 十字軍で重傷を負ったヴィルフレードはユダヤ人女性レベッカに助けられる。レベッカはヴィルフレードに恋し、イングランドまで父と一緒にやってきてしまう。レベッカを見て、惹かれてしまうのがテンプル騎士団の勇者ブリアーノ(ブライアン)であった。ブリアーノは、レベッカと一緒になれたらテンプル騎士団をやめて新たな生活をしようとまで思う。
 アシュビーの槍試合で正体不明の黒い騎士が登場し優勝する。
 第一幕
 この正体不明の黒い騎士(実はヴィルフレード)を褒め称える歌から始まる。その前に序曲があるのだが、この上演指揮はアンドレス・オロスコ=エストラーダ。オーケストラはヴィーンフィル。彼の指揮は、オケを目いっぱい鳴らすタイプで、スコアが見えるようだ。曲想によってはスイングするところもあるのだが、一点不満がある。ニコライの楽想には明らかにベルカントオペラに想を得たフレーズがあり、同じフレーズを何度も繰り返す箇所が出てくるのだが、そういうところで軽さがない。力一杯、鳴らしつくしてしまうのである。
オーケストラがあまりに鳴ると歌とのバランスが難しくなってくる。オーケストラ・ピットにいてさえ、人数が多いのだからフォルテの時のエネルギーはすさまじいわけで、同じ舞台だとなおさら厳しくなるわけである。
 さてこの謎の騎士は正体を明かさないままチェドリーコの館に招もかれる。
 槍試合で初めて敗北を喫したブリアーノはショックを受けている。彼はますますレベッカを思い、部下は今ならレベッカを誘拐できると進言する。
 ロヴェーナは謎の騎士がヴィルフレードではないかと疑っている。そこへ、レベッカと父が助けをもとめてくる。ロヴェーナは彼らを保護する。
 ブリアーノは城に侵入し、レベッカを引き渡すよう要求するが、チェドリーコは拒絶。ブリアーノが剣を抜くとヴィルフレードが割って入り、正体をあかす。ブリアーノの部下はレベッカを拉致する。
 ここで休憩。
 歌手はヴィルフレードがフローレス。声を誇示するというのではなく、曲想にそって表情をつけていき文句ない。ブリアーノがルカ・サルシ。なかなtか立派な声で演奏も良かった。レベッカはクレメンティン・マルゲーヌ。フランスのメゾ・ソプラノだが、声といい音楽性といい、佇まいといい素晴らしい(当初はディドナートが予定されていた)。チェドリーコはサンペトレアン。このオペラ、バリトンやバスが大活躍する。その点では、ヴェルディに通じるものがある。曲想はドニゼッティ的なところ、初期のヴェルディ的なところ、もちろん、ニコライ独特のところがあるのだが、僕の好みからすると、もう少し、ベルカント風に振ってってくれればという感想を持った。もちろん、これはこのプロダクションの初演であり、演奏を重ねて練れてくれば、硬さが取れて闊達な演奏が期待できるかもしれない。(二幕以下、項を改めます)。

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