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2016年3月14日 (月)

《イル・トロヴァトーレ》

ヴェルディ作曲のオペラ《イル・トロヴァトーレ》を観た(上野・東京文化会館)。

指揮はバッティストーニ。オーケストラは東京都交響楽団。バッティストーニのヴェルディは日本とイタリアで何度か聞いているので期待値はどうしても高くなってしまう。期待値が高かったということを断ったうえで言うと、都響はオペラになれていないのだな、という気がした。潜在的な演奏能力は高いと思うが、イタリア・オペラのノリがイマイチなのである。リズム感も含めて。ところどころこんなところでというミスもあった。しかし、これは評者がこの曲を様々なCDの名盤で(いや50年代、60年代の名盤のみだが)何度も何度も聞いてしまったから気がついてしまったのだと思う。こういうところが古典的な名曲のこわさだ。
演出はすっきりしていたが、個人的にはこの頃時に見られるルーナ伯爵とレオノーラ(恋人マンリーコを救うために自分の身をささげるというーーだがその時彼女は毒薬を飲んでいる)が実際に肉体関係を持つことを暗示するようにはしないほうが好ましいと筆者は考えている。このオペラの原作は、スペインのロマン主義演劇であり、リアリズムが追求されるべきものではなく、レオノーラは理想化された女性(こういう生き方が女性の理想なのか、と憤慨する向きもあるかもしれないが、そういう意味ではなくて、ある観念を具現化する存在に近づいているといったらよいだろうか)なのである。
ルーナ伯爵は上江隼人(敬称略)。近年のレオ・ヌッチのようにパルランテを多様し、表情の綾を使いわけていたのは見事だったが、もう少し控えめでもよかったのではないか。レオノーラの並河寿美は熱唱。個人的にはもう少しヴィブラートが少ないほうがレオノーラの性格にかなうのかという印象を持った。アズチェーナの清水華澄は見事だった。歌唱、存在感がアズチェーナにピッタリ。

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