《Written on Skin》
《Written on Skin》をBDで観た。
21世紀に作曲、制作されたオペラである。初演はフランスのエクサンプロヴァンスだが、BD(ブルーレイディスク)はイギリスのロイヤルオペラでのもの。
作曲者ジョージ・ベンジャミンが指揮をしている。リブレットはマーティン・クリンプ。ただしクリンプはリブレットと呼ばずにテクストと呼んでいる。また、このオペラは3幕構成なのだが、第一幕(Act 1)とは言わずに Part 1, Part2, Part3 と呼ばれ、場に関しては通常とおなじくscene という語が用いられている。
ストーリーは中心部分は三角関係である。夫婦がいて、少年がやってきて、やがて妻と関係が出来てしまう。ただし、これが中世フランスのトロヴァドゥール(吟遊詩人)の物語に基づいているところが一工夫あるところだ、夫はプロテクター(保護者)と呼ばれていて、妻は最初は従順なのだが、少年の存在により何かが動きだし、セクシュアルに解放されてしまい、そのことが悲劇を招く。妻に愛人の心臓を食べさせるというグロテスクな場面は、おそらく元になった話にあるものだろうし、少し時代がくだってボッカッチョの《デカメロン》でもこういった場面は出てくる。
夫は、聖書にもとづいたイラスト入りの本の制作を少年に依頼して、自らの家に住まわせているうちに彼と妻が接近してしまうのである。
音楽は、アルバン・ベルク以降の前衛的な音楽がこなれた感じで場面、場面にふさわしく響く。
舞台は、上下二段に分かれ、上の部分は現代、下の段(1階部分)は向かって左が現代(衣装の着替えるところが客席から見える)、右が中世風の場であり、現代というフレームと隣接して中世の世界の劇が展開している。
そこで、女性が単に男に従順である存在から、セクシュアルに解放され、解放されると同時に悲劇的結末を迎えるという様々な解釈を引き寄せるストーリー展開になっている。
1時間40分ほどなので、1本の映画を観るくらいの時間であり、上記のような通俗性とメタストーリー性を兼ね備えているので、飽きずに最後まで見通せる。いや、後半、終盤にかけて引き込まれていく。
友人にその存在を教えられて観たのだが、いくつかの賞も取り、ここ数年では評判のオペラであるようだ。
脚本やプロダクションまでふくめて良く出来たお芝居になっていると思った。
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