メッセニアの神託(つづき)
メッセニアの神託(ヴィヴァルディのオペラ)は、今回、コンサート形式ではなく、舞台化された。
王ポリフォンテと女王メロペは、比較的王様、女王らしい衣装だが、その他の登場人物は、時代や国籍不明な感じの衣装。プリーツを使ったたっぷりとしたパンツルック。忍者風と言えばよいだろうか。人によっては刀のようなものを帯びている。
舞台は、演出家彌勒忠史の考えで、能舞台を思わせるもので、橋がかりがある。これは良い考えで、バロックオペラには退場アリア(歌い終わって退場する)がしばしばあるので、退場のための空間があるのは、まことにふさわしい。
衣装や身体的な動きは、日本的な要素がかなりあるのだが、全体として大変効果的で、複雑なストーリーを理解する助けになっていたし、演劇的に十分見応えのあるものだった。歌手たちも、あれだけ難曲つづきで、かつ、練習期間2日間+ゲネプロだったにもかかわらず、見事に演じていた。ヨーロッパでは演奏会形式で演じているので、音楽がすっかり入っているから短期間で演技を加えることができたのかもしれない。
ビオンディによると、《メッセニアの神託》当時の劇場の大きさは、神奈川県立音楽堂程度の大きさだったし、オーケストラは、観客と同じ平面におかれていた。
彌勒氏は、大変な才人で、カウンターテナーとして歌うこともあれば、フェッラーラの宮廷文化についてイタリア研究会で講師をつとめることもあれば、今回のように演出をすることもあれば、ラジオのイタリア語講座で講師をつとめることもある。まさにマルチな才能を持った異能の人である。バロック・オペラという、時代は古いが、現在逆に一番「新しい」分野の開拓者としてふさわしいとも言えよう。
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