ロッシーニ《結婚手形》、《なりゆき泥棒》
ロッシーニのオペラ《結婚手形》、《なりゆき泥棒》を観た(新国立劇場)
新国立劇場オペラ研修所の公演である。《結婚手形》も《なりゆき泥棒》も一幕もののオペラである。結論から言えば、どちらの上演も、若手の歌手たちの演奏水準が非常に高く、上演頻度が高くないがロッシーニの楽しいオペラ(楽しいだけではないが、その点は後で触れます)を大いに楽しめた。
主要な歌手は、研修所の15期生、16期生、17期生で、賛助出演で12−14期生の先輩歌手が出演している。
オーケストラは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団で、指揮は河原忠之(以下、敬称略)。この方は、伴奏ピアニストとしての活躍を見ることが多いかもしれない。
演出・演技指導は久恒秀典。装置は長田佳代子。舞台はおおきな円形のディスクが舞台の中央部分を占めていて、そこで主にドラマが展開するが、円形からはずれた左端には大きなドアがある。すっきりしていてモダンであるが、決してチープでない舞台および衣装で好感が持てた。
《結婚手形》は、舞台がロンドンで、そこへカナダの商人が婚活にやってくるという話。カナダの商人スルックは取引先に花嫁の調達を依頼するのだが、依頼されたほうは自分の娘を嫁がせようとする。しかし娘には恋人がいて。。。というストーリー。スルックが二人の愛に気づくと、納得して、男を自分の遺産相続人にするなどという、いかにもありそうもないご都合主義的な部分もあるが、めでたしめでたしで終わる。若手歌手たちは、それぞれイタリア語の発音もしっかりしていたし、ロッシーニの様式を踏まえた歌唱で聞いていて気持ちがよい。これで、ロッシーニ・クレシェンドをもう少し聞かせてくれたらと言ったら欲張りすぎだろうか。
《なりゆき泥棒》は、原作がスクリーブのせいもあるのか、《結婚手形》の台本より、台本(リブレット)の出来がよいと思う。《結婚手形》は1810年、ロッシーニ18歳の時の作品で、彼の最初の劇場作品である。《なりゆき泥棒》は2年後の作品だが、その間にロッシーニは5作もオペラを書いて、あきらかにオペラ作曲家としての成熟をみせている。
歌手では、テノールのアルベルト伯爵を歌った小堀勇介、クラリーナとエルネスティーナを歌ったメゾソプラノの藤井麻美が印象的だった。他の歌手も先に述べたように、レチタティーヴォもアリアもイタリア語がしっかり発音されていたし、演技も観客にとってわかりやすく好演であった。
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