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2015年2月19日 (木)

室内オペラ《可不可》

高橋悠治「カフカ三部作」上映会&トークショウの第一日を観た(バラボリカ・ビス、東京浅草橋)。

オペラそのものを観たのではなく、オペラを記録したものの上映会に行ったのである。上映会の前後に、作曲家高橋悠治氏および演出家、出演者のトークがあった。編集者須川才蔵氏の司会。
高橋氏によると、当日上映された《室内オペラ可不可》は、高橋さんたちが『水牛通信』というミニコミ誌をやっていて、それが100号に達し、手元に100万円ほどが蓄えられていたので、室内オペラをやろうということになったらしい。1987年に演じられたもので、場所は、築地本願寺。だから普通の音楽用のホールではない。
音楽は、これまた高橋氏の話によると、カフカがユダヤ系であることにちなむものであろうが、東欧のアシュケナージの旋法を使っているのだという。
一貫したストーリーは作者が最初から拒否しており、断片を積み重ね、しかも、それに一定の意味づけ、解釈を与えることを拒否している。それではつまらないし、作品が狭いものとなってしまう。
このカフカ3部作に関しては雑誌『夜想』(2014年10月、特集カフカの読みかた )でも高橋氏と須川氏、今野氏の対談が掲載されており、興味深い。『カフカノート』という作品は、単独でみすず書房から書籍化されて出版されているのだが、これもまたカフカのノートからの断片を集めたもので、ドイツ語で上演しても、日本語で上演してもよいように、日本語の訳文はドイツ語と音の数をそろえてあるのだと、ご本人が語っている。(そのことは、当日、高橋悠治さんとお話させていただき確認したことでもあった)。
当日の会場は、最寄り駅は浅草橋で、番地は柳橋、画廊であり、上映会は50か60人で会場がいっぱいになっていた。こういう断片的なつくりは、ブレヒトらのキャバレーオペラが元になっているのだという。
高橋悠治さんの話を聞いていると、オペラはこういうもの、演劇はこういうものといった固定観念が、ほどけて、未知の方向に感覚的な探検をしたくなってくるから不思議だ。

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