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2014年12月13日 (土)

ロベルト・ピウミーニ『逃げてゆく水平線』

ロベルト・ピウミーニ著長野徹訳『逃げてゆく水平線』(東宣出版)を読んだ。

25の短篇集である。いわばショート・ショートで、1つ1つは独立した話で、オチもついている。寓意的な物語が多い。
たとえば、「沈黙大会」では、単に沈黙の長さを競うのではない。どんな沈黙にも特別な音が混じっているというのだ。アブルッツォの羊飼いの沈黙に耳を傾ければ、羊の鳴き声や風の音が聞こえてくる、といった具合だ。超高感度の電子装置で、沈黙の中に潜むかすかな物音を検知するのだ。チベット僧侶の沈黙の中には、アーモンドの芽がほころぶときに立てる、かすかで繊細な音が検知され、彼は敗退する。このように、寓話的な枠組みの中に、細部には詩的な叙情も香り立つ。
「メガネをかけた足」では、メガネをかけるとかっこ悪いと信じている男がいて、あちこちにぶつかるものだから、足(擬人化されている)が腹をたて、痛くてたまらんからメガネを買ってくれという。顔ではなくて、足にメガネをかけることになるのだが、右足と左足がまったく性格が異なる。右足は活動的で外が好きなのだが、左足は、静かで、家で本を読んだり、図鑑をながめたりしているのが好きなのである。こうして右足と左足の齟齬に悩む男が、色弱の女性と出会う。そこで何が起こるかがユーモラスに語られる。
凝った詩的な言い回し、比喩と、寓意的なストーリー展開がうまく組み合わされた短篇のつらなりで、とても面白くよめる。読者の年齢を選ばない童話集といえるかもしれない。

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