ロッシーニの6つのソナタ
ロッシーニの弦楽四重奏曲に関するレクチャーと演奏を聞いた(ペーザロ、ロッシ二・オペラ・フェスティヴァル)。
お断りしておけば、レクチャーと演奏は別の日に行われた。レクチャー(incontroとここでは呼んでいる)をしたのは、ロッシーニの弦楽四重奏曲の楽譜の編纂をしたマッテオ・ジュッジョリで、この曲を考えるうえでの問題点をいくつか指摘してくれた。
1つは成立時期で、この作品はロッシーニの最初(期)の作品であり、知人のためにつくってロッシーニ自身は第二ヴァイオリンを担当した。
またこの曲は4つの弦楽器からなるが、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリンとチェロとコントラバスで構成されている。通常の弦楽四重奏曲であれば、ヴィオラがはいるところだがヴィオラはない。通常ははいっていないコントラバスが入っているので、低音に厚いクァルテットである。
成立時期についてはロッシーニが所有していた楽譜に書き込み(訂正)があり、12歳となっているがもとは16歳と書かれていた。またいまはソナタとかかれているがもとはクワルテットと書かれていたのである。12歳に訂正したのは、本当にその頃作曲したからである可能性もあり、また、ロッシーニが自分を早熟の天才と見せたかったからである可能性もあるという。
6つの四重奏曲のなかでとくに興味深いのは6番目の三楽章はテンペスタ(嵐)と名付けられていることだ。他の四重奏曲はアレグロなどと書かれている。
このテンペスタは後のオペラにしばしば出て来る嵐の場面と比較すると短いが、曇ってきて嵐が起こってやがて雨がやむといった感じを出している点では共通している。嵐の最中は早いパッセージが繰り返されるが、転調しながら繰り返されるので、目が回るような印象を与える。
ロッシーニの場合、若書きであるし気質の問題もあるが、ベートーヴェンのように苦悩を通じて歓喜へという作風ではない、曇ったり晴れたり、苦悩しまくって解決に到達して歓喜が訪れるというよりは、ふと雨がやんで薄日がさしてくるのだ。こういう音楽がもの足りないと感じる人もいるだろうし、重くなくてさわやかで心地よいと感じる人もいるかと思う。
演奏は第一ヴァイオリンがサルヴァトーレ・アッカルド。贅沢なものだ。第二ヴァイオリンはラウラ・ゴルナ。チェロはチェチリア・ラディッチ。この人は確実なサポートで好感が持てた。コントラバスはフランコ・ペトラッキでアッカルドと同年輩。若手とベテランが2人ずつのクワルテットであった。堪能した。
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