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2014年8月22日 (金)

小荘厳ミサ

ロッシーニ作曲小荘厳ミサ曲を聞いた(ペーザロ、ロッシーニ劇場)。

 

原題は Petite Messe Solennelle でフランス語である。周知のように、ロッシーニは後半生をフランスで過ごした。曲は友人で銀行家の Alexis Pillet-Willに委嘱されて作ったものだ。当初は編成も小さく、2台のピアノとリードオルガン(armonium)、12人の歌手(4人のソリストと8人の合唱)のために作曲されたのだが、後世に他人がオーケストレーションするよりはということで、ロッシーニ自らオーケストラ版も作った。

 

この日演奏されたのはROFの芸術監督であるアルベルト・ゼッダ指揮によるオーケストラ版。ボローニャ歌劇場管弦楽団と合唱団。ソリストはソプラノがオルガ・センデルスカヤ、メゾがヴェロニカ・シメオーニ、テノールがディミトリ・コルチャック、バスがミルコ・パラッツィである。オーケストラ版は当然ながらオケの人数も合唱の人数も多いので重厚な響きがする。音楽そのものも、ロッシーニの最晩年の曲のせいか、念入りに書かれてはいるのだが、あふれるようにメロディーが沸くという印象ではない。同じ宗教曲でも「スターバト・マーテル」の方が、軽やかな歌に富んでいると言えよう。

 

とはいえ、マエストロ・ゼッダはまったく年齢を感じさせぬ生き生きとした棒。というより、ゼッダは世代が違うから、カラヤン風の縦の線をそろえることに重きを置く(置きすぎる)という弊をまぬがれており、中年以下の世代より、かえって自由で風通しのよい音楽が聞けるのだ。それが日本でもゼッダの指揮が人気を博している大きな理由の一つではないかと筆者は考えている。

 

ミサ曲であるから、神をたたえる歌詞なのは当然だが、終曲のmiserere の痛切な響きを聞くと、神に魂の救いをもとめる気持ちが晩年のロッシーニには強かったのかと推測される。むろん、合唱が軽やかにかけあいをするテンポの早い曲もあるのだが。

 

プログラムによると、1865年6月にロッシーニはリストに手紙を書いている。晩年のリストは叙階を受けて(司祭となって)、ヴァティカンに住んでいたのだ。リストに仲介してもらい、教皇に、教会内で女性が歌うことの禁止を解除してもらおうと考えたのだ。このときの教皇はピオ9世。リストとのやりとりがあり、やがて教皇大使フラヴィオ・キージを介して、ロッシーニが直接、教皇に手紙を書く。が、結局、女性が教会で歌う許可はおりなかった。

オーケストラ版も充実した響きだが、ピアノ版も実演を聞いてみたいと思った。

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