《偽の女庭師》(つづき)
ら《偽の女庭師》の第二幕。アルミンダ(市長の姪)はベルフィオーレをサンドリーナの件で責める。ナルド(サンドリーナの従者)は小間使いセルピエッタを口説くがうまくいかない。サンドリーナは自分の正体(本名はヴィオランテ)を認めないが、そこへラミーロがやってきてベルフィオーレが殺人犯だと糾弾するので、自分の正体を明かすことで、ベルフィオーレが殺人を犯していないことを証明する。しかし、その後で、あれはベルフィオーレを救うための虚言だったと言って、ベルフィオーレは正気を失う。サンドリーナも正気を失い逃げさる。このあたりは演出によってストーリーが変わってくるようで、あらすじを書く人によって食い違いがみられる。いずれにせよ、暗闇が一種の狂気を表す空間となっているのが興味深いし、そこでの登場人物たちの交錯、相手の認識のずれ具合をどう演出するかも演出の工夫のしがいがあるところだろう。
第三幕はサンドリーナとベルフィオーレが正気を取り戻しむすばれ、アルミンダとラミーロがむすばれ、セルピエッタとナルドが結ばれ、市長が残る。
三組の恋人、あるいは7人の登場人物が複雑に思いを寄せたり片思いだったりするのは、最初は理解しにくいが演出が巧みであればそれほどフォローしにくくはないということが判った。また、これはセルピエッタなどはペルゴレージの《奥様女中》を想起させるように、階級をとびこえて玉の輿をねらっているわけだが、最終的にはみなそれぞれ階級のつりあったカップルが形成される。階級意識や、無意識や狂気への示唆はあるが、それを正面から取り上げてこれぞテーマとするほど過激ではないのだが、それだけに演出しだいで予定調和にも相当挑発的にもなりうるドラマである。
この劇のリブレット(脚本)は、モーツァルトより前にパスクワーレ・アンフォッシという作曲家に提供されたもので、モーツァルトのリブレットにはリブレッティスタの名は記されていないのだが、上記のことからジュゼッペ・ペトロセッリーニが書いたものとされている。ゴルドーニがそもそもの原作とのこと。もっともっと上演されてしかるべきオペラであると強く感じた。
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