グスタフ3世
グスタフ3世といえばヴェルディの《仮面舞踏会》である。グスタフ3世は歴史上実在のスウェーデンの王で、仮面舞踏会でアンカーストレム伯爵にピストルで打たれ死亡した。
その史実をもとにスクリーブが戯曲『グスタフ3世または仮面舞踏会』を書いたのだ。ただし、そこにはグスタフ3世とアンカーストレム伯の妻の間の恋愛関係など歴史的な事実というよりはファンタジーが付け加えられていた。
ヴェルディはスクリーブの戯曲をもとにしたアントニオ・ソンマのリブレットに作曲をしたわけである。しかし、王の暗殺というテーマは初演の1850年代にはあまりに過激なものだったので、ナポリでは上演できず、ローマに変更したが、それでも内容をグスタフ3世の暗殺から、アメリカのボストン総督リッカルドの暗殺に変えることを余儀なくされた。グスタフ3世は、実際には恋愛沙汰ではなくて、むしろ貴族階級との対立から暗殺されたとのことである。ロシアと開戦したのだが、貴族たちの同意をとりつけなかった。伝統的にはそれがルールであったのだが、グスタフ3世はむしろ貴族階級の特権を剥奪するクーデターを挙行した王だったのだ。
芸術を好んだ人で、彼が兇弾に倒れたのが仮面舞踏会であったのも彼らしいとも言える舞台だった。彼の遺品が見られるのは王宮の一隅にある王家武儀博物館(Livrustkammaren)で、そこには彼と王妃の結婚式の衣装も見られるし、彼らが用いた馬車も展示されている。いずれもロココ趣味にいろどられたものであり、彼はヨーロッパの中心部の流行に敏感なお洒落な王様だったのだが、王妃との関係は冷え冷えとしたものだったようだ。
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