エンリコ4世
マルコ・ベロッキオ監督の映画《エンリコ4世》を観た(渋谷、イメージフォーラム)。
この映画は主演がマルチェロ・マストロヤンニとクラウディア・カルディナーレ、監督がマルコ・ベロッキオというだけでも豪華だが、そのうえ音楽はピアソラで、撮影監督はジュゼッペ・ランチという興味をかきたてられるキャストである。
さらに、原作はイタリアのノーベル賞作家ルイージ・ピランデッロの同名の戯曲である。ピランデッロが原作となったイタリア映画といえばタビアーニ兄弟が監督した《カオス・シチリア物語》が有名だが、いずれも、不思議な世界観を示すものだ。ピランデッロはフランスや英語圏で不条理演劇というものが出てくる前に、不条理演劇を作り出してしまった人なのである。
エンリコ4世というのは、1077年のカノッサの屈辱のハインリッヒ4世(教皇グレゴリウス7世から破門を解いてもらうため3日間雪の中に立ち尽くしたあの人です) のイタリア語読みである。
しかし、原作もこの映画もいわゆる歴史劇ではない。ある人物が、カーニバルでエンリコ4世に扮している際に、落馬して頭を打ってそれ以来自分をエンリコ4世だと思い込んでしまい、周りのものもそれにあわせて演じているという状況なのである。
そこへ「エンリコ4世」の昔の恋人マティルデ・スピーナ侯爵夫人と娘のフリーダらがやってくる。それをきっかけに狂気が正気に戻って。。。あるいはどこまでが演じられた狂気なのかという問題が生じてややこしいことになる。
ちなみに、原作の戯曲は大学書林から『エンリーコ4世』という対訳本で出版されている。小林勝氏による懇切丁寧な註つきである。
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コメント
配役、原作者、音楽にひかれて見に行きました。
ピアソラは好きですが、音楽が難解さを増幅しているように感じました。
それにしてもフィルムの状態が悪すぎます。なんとかきれいに修整してほしいものです。
投稿: カトリ | 2014年7月30日 (水) 09時01分