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2013年12月 5日 (木)

《仮面舞踏会》

トリノ歌劇場の来日公演でヴェルディの《仮面舞踏会》を観た(東京文化会館)。

指揮はノセダ。リッカルドがラモン・ヴァルガス、レナートがガブリエーレ・ヴィヴィアーニ、アメーリアがオクサナ・ディカ、ウルリカがマリアンネ・コルネッティ、オスカルが市原愛。
《仮面舞踏会》は劇的緊張度が高いオペラである。しかも、声の性格の異なる数多くの登場人物がそれぞれに見せ場、聞かせどころを持っているから充実したキャストを揃えるのはむずかしいであろうことは想像にかたくない。
今回のキャストはバランスがとれていたと思う。また、ノセダの指揮は、緊張が高まる箇所を、テンポをあげるのではなく、むしろ音のインテンシティ、緊張度を高めるというやり方で音によるドラマを構築していた。オーケストラは見事にその要求に応えており聞きがいがあった。
演出としては、レナートが妻アメーリアが不貞を働いていると思い込んだ第三幕で冒頭明らかにDVであり、ベッドがおいてあってそこでドラマが展開することに軽い違和感があった。単なる家庭悲劇に矮小化されてよいのか、このドラマは、と。せっかく、ヴィヴィアーニの歌唱は格調高いのに、なんだかヴェリスモ的なドラマづくりであると感じた。オスカルの市原愛は丁寧な歌唱で、初日のせいかもしれないが、もう少しはじけた感じがあってもよいかと思った。
スカラ座といい、トリノといい、案外、空席が目立つ。引っ越し公演という贅沢な催しが将来も続いていくのか、かすかな不安をおぼえた。

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