《フィガロの結婚》
モーツァルト作曲《フィガロの結婚》を観た(新国立劇場)。
アンドレアス・ホモキの演出は、再演とのことであるが僕ははじめて観た。白と黒が基調で、舞台は大きな直方体(部屋)の中で展開するのだが、この直方体が傾いている。
おそらくは、世界が、世界の秩序が正常ではなくなっていることを示唆しているのだろう。劇がしばらく進展すると、この直方体ががくっとたががはずれるのである。
フランス革命直前の時期に原作は発表されたことを意識した演出であろうかと思う。
伯爵はレヴェンテ・モルナール。伯爵夫人はマンディ・フレドリヒ、フィガロはマルコ・ヴィンコ、スザンナは九嶋香奈枝。
マルコ・ヴィンコは、背が高く、手足も長く、スマートな体型のフィガロで若々しく新鮮だった。スザンナの九嶋も、フィガロ以上に頭の回転のよい女性かつチャーミングな可愛らしい役どころを見事に演じ歌っていた。
フィガロは、ストーリーだけ見れば、冒頭から部屋の割当ては、実は伯爵がスザンナに目をつけているからだということで、セクハラ、パワハラ満開のストーリーであるが、ダ・ポンテ(リブレット作者)の言葉の運びが軽やかで、かつモーツァルトの音楽が軽快かつエレガントなので、そういう嫌らしさがまぎれてしまう。
むしろ、次々に展開する二重唱、三重唱に心を奪われてしまうのだ。
いまさらながら、傑作中の傑作であると感じた。
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