《リゴレット》
ヴェルディの《リゴレット》を観た(NHKホール)。
一言で言えば、ヌッチの一人舞台である。観客の反応からすれば、ヌッチのファンが多いのであろう。たしかに、ツボを心得たうまさがあるのはたしかだが。こちらとしては、それは踏まえたうえで、何か新しい良さを見いだしたいところだ。
指揮はドゥダメル。テンポを動かすのはいいのだが、変わり目が時に機械的で、せっかくのスカラ座のオケの精妙さがそこなわれる部分があったのと、《リゴレット》というオペラの全体の息をもつかせぬ推進力よりは、部分、部分で整理している印象を受け、ヴェルディの音楽に心身ともに圧倒される感じは薄い。合唱が悪くはないのだが、指揮者が一種の楽器として鳴らしている感じで、言葉をはっきり響かせようという意志が感じられなかった。スカラ座に対してはこちらも期待度が高くなる。当然ながら、素晴らしい演奏なのだが、あえてもう少しここがというところを述べた。
公爵はジョルジョ・ベッルージ。ジルダはマリア・アレハンドレス。高音が特にビブラートが特徴的な声で、ジルダに向いているのかは疑問。ドゥダメルのテンポも遅すぎて音楽の流れがゆるやかすぎるように思えるところがあった。
感銘を受けたのは舞台だ。これが1994年のプロダクションであると思うと、20年前はこういう舞台がつくれたわけだが、ヴェルディ年の今年、ミラノで観た《マクベス》の舞台(装置)はさみしい限りであった。
イタリア経済の回復を祈るのみであるし、スカラ座の総監督がリスナーからペレイラに変わった時に、指揮者の起用がどう変わるのか期待したいところだ。
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