《アイーダ》
ヴェルディのオペラ《アイーダ》を観た(アレーナ・ディ・ヴェローナ)。
《アイーダ》は毎年のようにアレーナ・ディ・ヴェローナで上演されるが、演出はさまざまである。今年は2種類の演出の《アイーダ》が日を替えて上演されている。僕が見たのは、新演出でカルルス・パドリッサとアレックス・オジェおよびラ・フラ・デルス・バウスという演劇集団。カルルス・パドリッサはこの演劇集団に6人いる演出家の一人。こうした情報は、アレーナ・ディ・ヴェローナのホームページにアップされていて誰でも見ることができる。また演出の意図についても、プレスに発表したものがアップされていてダウンロードできるようになっていてこの音楽祭は情報の提供の仕方については大変親切である。個々の指揮者や歌手についても、クリックすれば、略歴を知ることができる。
これはかなり変わった演出で、まず音楽が鳴りだす前に舞台で人が動いているのだが、それはどうもエジプトで発掘調査をしている人たちが何かを発見したということらしい。発掘されたものを組み立てる作業が展開されたりするのだが、プレス資料によるとあたかもフラッシュバックのようにアイーダやラダメスの時代が展開されるというのだが、2つの作業塔(写真参照)は最初から最後まであるし、そこでアクロバットのように宙づりで踊りを踊ったりするのでスペクタクルではあるのだが、意味はあまりわからない。
未来指向的なピカピカ光る衣装をアムネリスもアイーダも着ている。宇宙服のようでもあるし、形は古代風でもある。単なる古代の物語に大人しくおさめたくはないという演出意図は感じられるが、それがどう組織化されて新たな物語を提出しているのかは不明だった。
指揮はウェルマーというイスラエル人の若手指揮者。ロシア・ドイツ系とのこと。大降りで明快な指揮。きびきびしたテンポであるが、テンポや強弱の指示ははっきりしているのだが、フレージングや音色に対するこだわりはあまり感じられず、いつものアイーダの響きであった。
アイーダはダニエラ・デッシ。アムネリスがカゾッラ。ラダメスがカルロ・ヴェントレ(2幕終了後、体調不良だが続行するというアナウンスがあった)。ランフィスがマルコ・スポッティ。アモナズロはリナーレス。
凱旋行進の場面は、ダンサーではなく、機会仕掛けのラクダや象にのった人物(巨大な仮面をつけている)が登場し、音楽のテンポは早かった。
総じて言えば、演出が大変に奇抜だが、音楽は伝統的なアイーダ演奏の枠におさまっていた。そのことが不思議といえば不思議であった。好みがはっきり別れそうな《アイーダ》である。
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