《ニュルンベルクのマイスタージンガー》
ワーグナーのオペラ《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を観た(ザルツブルク、祝祭大劇場)。
筆者は、ワーグナーに関してのみ楽劇という言葉を用いることはしていません。なぜなら、バロック時代のオペラやモーツァルトのオペラもオペラと呼んでいるのは後世の人間であるからです。たとえば、オペラ・ブッファという言葉も総称にすぎず、オペラ・ブッファに分類されそう呼ばれる当の作品がオペラ・ブッファと名乗っていることは珍しいからです。オペラという言葉はその作品の自称が何であれ、総称として分類の便宜のために用いられてきたし、当ブログでもそういう意味合いにすぎません。
上演は11時に始まった。途中に2回の休憩があった。最初は1時間(たぶん、昼食を食べる人のことを配慮して長いのだと思う)。2度目は30分。終演は5時。
ワーグナー歌手というのは、別物だなと思った。こんなにオーケストレーションが厚く書かれていて、そこを突き抜けて聴かせねばならないし、しかも演奏は休憩をはさむとはいえ、6時間にも及ぶのである。まさに超人的。
この日はハンス・ザックスのミヒャエル・フォッレが大活躍。演出も、このオペラ全体がザックス親方の見た夢という演出であった。だから、舞台が進行する時にも登場人物がのっている台のようなものが巨大な本であったり、巨大なインク壺があったりする。ザックス親方の書き物机から転移してきているのだ。
指揮はダニエーレ・ガッティ。ドイツ系の指揮者とは、ためるところが違うというか、ほとんどためない。メローディアスなところでは、テンポをゆっくりめにしてたっぷり歌わせる。そんな点が新鮮と言えば新鮮だし、軽い違和感をおぼえる人もいたかもしれない。
イタリアものと比べて、ワーグナーは歌詞の量が多いということに気がついた。歌詞の内容も理屈っぽいのである。長い歌詞で次々に変わっていくので、英語字幕だと読み切れないことがしばしばあった。単に上演時間が長いだけでなく、一人一人の個々の台詞も長台詞が多いのである。いろいろな点で興味深い上演であった。
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