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2013年8月27日 (火)

オラトリオ《アレクサンダーの饗宴》

ヘンデルのオラトリオ《アレクサンダーの饗宴》を聴いた(モーツァルテウム、ザルツブルク)。

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、モーツァルテウム管弦楽団の演奏、独唱者は、ソプラノがハナ・モリソン、テノールがマウロ・ペーター、バスがコンスタンティン・ヴォルフ。

この曲はオラトリオだが世俗オラトリオで、くだけて言えば、ヘンデルはイギリスでイタリア語台本のオペラをずっと書いてきたのだが、なぜかそれが流行が下火になったので、英語でオラトリオを書いてあたったのである。
世俗的オラトリオは登場人物はいるし、合唱はいるので、乱暴に言えば、演奏会形式のオペラ上演みたいなものと思ってもいいかもしれない。

これは原作はジョン・ドライデンの詩で、ジョン・ドライデンといえばイギリスでは17世紀の大物中の大物詩人なのだが、日本では一部の英文学者をのぞいては敬遠されがちで、英文学者ですら読まない人がおおいのが実情である。原題は、「アレクサンダーの饗宴、あるいは、音楽の力」と副題がついている。

この詩の内容は、アレクサンダー大王がペルシャと戦いペルセポリスに進軍して、そこで愛人のタイスと宴会を催している。そこでティモテウスが竪琴をかきならし、アレクサンダーの心にはいろいろな思いが去来するが、最終的には戦いに倒れた兵士への復讐としてペルセポリスの破壊を決意するというものである。

このドライデンの詩をもとにニューバー・ハミルトンが台本を書いたのが英語版の「アレクサンダーの饗宴」。今回はカール・ヴィルヘルム・ラムラーのドイツ語台本による上演であった。ドイツ語版がどういう経緯で出来たのかは筆者は知りません。

曲は序曲があって、レチタティーヴォありアリアあり合唱ありで、構成としてはオペラとの共通点が多い。英語版では、歌詞がたとえば、
Bacchus' blessings are a treasure,
Drinking is the soldier's pleasure:
という風に行末のtreasure と pleasureが韻を踏んでいる。例にあげたもののように2行で同じ韻をふむカプレットも多用されているし、韻の形がABBA となるような4行の連やそれがくずれて5行になっているものなどもある。

ドイツ語の版は意味をとって訳したものらしく韻は踏んでいない。英語版(オリジナル)を聴けば、韻を踏んでいるところで、音楽はどう歩調を合わせているか、メロディーをそろえているか、リズムをそろえているのか、音型をそろえて移調しているかなどがわかるだろうが、今回は不明。

モーツァルテウムは祝祭大劇場やモーツァルト劇場と比べると小ぶりであり、オーケストラも小編成である。それもあって、対位法で旋律が受け渡される(第一ヴァイオリンから第二ヴァイオリンへ、ソリストから合唱団へ、第一ヴァイオリンから管楽器へ、など)のが音によっても、視覚的にも大変よくわかり、ヘンデルの曲作りの巧みさを堪能できた。

ヘンデルは早い情熱的なパッセージとゆったりとしたテンポで朗々と歌わせる部分の交え方が巧みで、こちらも気持ちよく緊張したりリラックスしたりしながらこの劇(オラトリオ)の世界に入って行くことが出来る。

ガーディナーと指揮はいかにも手慣れたもので、安心感をもって聴くことができた。ソリストたちも、よく様式感を表現しており、合唱団も含め全体の表現が非常によくまとまっていた。

観衆の拍手に応えて、ガーディナーは最終曲をアンコールとして演奏した。





























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