《愛の妙薬》
メトのライブビューイング(ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の上演の録画中継を映画館で上映するもの)で、ドニゼッティの《愛の妙薬》を観た。
アディーナがネトレプコ。ネモリーノがポレンザーニ。ベルコーレがクヴィエチェン。ドゥルカマーラはアンブロージョ・マエストリ。
あらためてこの曲の素晴らしさを感じた。《愛の妙薬》は、ストーリーは馬鹿馬鹿しくまた楽しい。アディーナに恋するネモリーノが、魔法の薬(実はワイン)をドゥルカマーラから高額で買う。
村娘たちは、ネモリーノが叔父から遺産相続をしたという話を聞いて態度が変わる(ネモリーノに愛想よくふるまう)のだが、ネモリーノは薬が効いたと勘違い。。。
アディーナはネモリーノが自分のために軍隊にいく覚悟までしたことに心うたれ、ハッピーエンド。
オペラ・ブッファ的な笑える要素と、ネモリーノのアリア「人知れぬ涙」のようにひたすらの愛を歌うロマンティックな要素が意表をつくパッチワークでつぎはぎされている。そのつぎはぎ具合が天才的であり、絶妙である。《愛の妙薬》ではないが、この調合は歴史的に一度限りのものだったように思われる。
これ以前では、これほどロマンティックな要素が出てこなかったし、これ以降ではこれほどオペラブッファの要素がない。
演出はおおむねオーソドックス。ネトレプコが乗馬用の帽子をかぶって、農場主の娘であることを強調していたというが、このオペラにとって、それはさほど重要ではないと思う。
歌手は皆、一生懸命演技していた。歌の様式観にはやや不満があるものの、曲が素晴らしいのでおおいに楽しめた。指揮はマウリツィオ・ベニーニ。
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