《ピーター・グライムズ》
ブリテン作曲のオペラ《ピーター・グライムズ》を見た(初台、新国立劇場)。
暗い話ではあるが、実際に観てみると、迫力があり、音楽的にも聞き所が満載であった。
ピーター・グライムズ(スチュアート・スケルトン)は主人公の名で、彼は漁村の船長。彼が雇っていた少年が死んだことに関する検死審理公判が開かれており、ピーターは無罪とされるが、もう少年の徒弟を雇わないようにとのアドバイスを受ける。
しかしピーターはエレン(スーザン・グリットン)の助けをえて孤児院の少年を再び雇う。
日曜の朝、村民は教会に行くが、エレンは少年の身体にあざを見つける。ピーターは少年に崖を下って船にいくように命ずるが、少年は足をすべらせる。
少年のセーターをエレンが発見し、その報告をうけたバルストロード船長(ジョナサン・サマーズ)は、ピーターに船を沖に出し、沈める(自殺する)よううながす。
指揮はリチャード・アームストロング。演出ウィリー・デッカー。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。合唱は、新国立劇場合唱団。いつもながら、日本のオケの演奏技術の高さ、合唱のレベルの高さに感心した。演出に関して言えば、簡素なのはよいのだが、服装が全員同じであると、主要人物との区別がつきにくい。僕は3階席で舞台から遠いせいか、見づらかった。
曲は、劇場で聞くと打楽器や弦の低音の迫力もあり、また透明感のある北の海を思わせる響きも美しく、ソロ、重唱、合唱の場面ごとにそれぞれの味わいがある。
斬新な響きはあるのだが、前衛的になりすぎない中庸な感じがブリテンの音楽にはあって、神経をひりつかせることはない。聴衆も日本ならではで、沈黙が支配するときにはまさに水を打ったような深い沈黙、無音状態が訪れる。味わい深い演奏であった。
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