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2012年10月 7日 (日)

《秘密の結婚》

1429miramareomoteチマローザ作曲のオペラ《秘密の結婚》を観た(新馬場、六行会ホール)

オペラ・ブッファの傑作であるが、モーツァルトやロッシーニと較べると上演回数が少ないので貴重な機会である。
A, B二組のキャストがあり、僕が観たのはAキャスト。
ストーリーはエリゼッタ(川越塔子)とカロリーナ(山邊聖美)の姉妹がいて、妹のカロリーナがパオリーノ(高畠伸吾)と秘密の結婚をしている。二人は姉エリゼッタがロビンソン伯爵(白石陽大)と結婚することを願うが、伯爵はカロリーナを観るなり、気に入ってしまい、二人を当惑させる。
姉妹の父ジェローニモ(伊藤純)は、最初はエリゼッタを伯爵と結婚させることに熱心なのだが、伯爵がカロリーナと結婚するなら持参金は半分で良いというと心が動いてしまう。
困ったパオリーノはジェローニモの妹フィダルマ(田辺いづみ)、つまりエリゼッタ、カロリーナの叔母に相談するが、フィダルマはパオリーノに恋している。
こうして話はこじれるが、最後には伯爵は、カロリーナを断念し、エリゼッタと結婚するという。ここいらへん、いかにもご都合主義であるが、むしろオペラ・セリア的と言える。オペラ・セリアでは、身分の高い君主が自らの欲求を抑えたり、慈悲を示すことで徳を示しかつ皆が幸せになるというパターンが見られるが、ここではそれが君主でなくて、相対的に身分の高い伯爵が君主的役回りを演じているわけである。
他の部分は、むろんオペラ・ブッファそのものだが、結末の部分だけストーリー上、オペラ・セリア的要素がとりいれられている。
この台本(リブレット)を書いたのは、ジョヴァンニ・ベルターティであるが、その原作となったのは、イギリスのお芝居でジョージ・コルマン(父)とデイヴィッド・ギャリックの共作。
オーケストラはフィルハーモニア東京という11人の小編成の管弦楽であるが、ホールが小さいので音量にまったく不満はない。指揮の樋本英一は、軽快なリズムで、肝心なところではさっとテンポを早め巧みに演劇的効果をあげる。また、歌手も、二重唱で、女性同士がライバル関係になった時など、柳眉を逆立てる様子を、声の表情の急変で表し、音楽と演劇の相乗効果をあげていた。
歌手はみな様式観を持って歌っており、聞いていて気持ちがよかった。イタリア語の発音もきれいでよく聞き取れるし、表情も適切。そのため、日本語字幕もあり、音楽としてもお芝居としても大いに楽しめた。また、小さいホールなので、歌手もよく声がとおるし、声の表情、演技の細部も無理なく伝わり、小ホールでのオペラの贅沢な味わいを満喫できた。演出は恵川智美。舞台装置は簡素だが、服装は時代衣装で違和感はない。演出もところどころに踊りの要素や、ジェスチャーが入るのだが、それが喜劇的要素をうまく伝えていた。
外来オペラもいいが、こういう日本製のオペラ・ブッファも大変水準の高いものが出て来ているものだと感心した。

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