《タンクレーディ》(ROF)
ロッシーニのオペラ《タンクレーディ》を観た(ペーザロ、ロッシーニ劇場)。
ただし、これは他の演目と異なり1日だけの上演で、コンサート形式でのもの。指揮はゼッダ。
ゼッダの指揮は独特のもので、若手のものとはまったく異なるタイプ。書でいえば、最近の指揮者は、楷書タイプが多いのだが、ゼッダは行書、時に草書で、自在に書いて行く。
かつ、雄渾な筆さばき。序曲からして違う。テンポは早め。リズムの刻みはくっきりと太めにつけていき、身体を揺らしてテンポを早めていく。その際に、スコアの縦のラインが崩れることに神経質にならないのが
好ましい。
CDで聞く、1950年代、60年代の指揮とオーケストラでは日常的な光景であったのに、カラヤンやそれに影響を受けた指揮者たちによって、音楽のリズムあるいは呼吸するようなテンポの揺れというものは随分窮屈なものになり、時には窒息寸前だった。
いまだに、そこにしがみついている(こだわっている)指揮者も少なくないが、ゼッダの指揮は闊達である。
歌手で特筆すべきはタイトル・ロールのバルチェッローナ(メゾ・ソプラノ)とアントニーノ・シラグーザ
(テノール)であろう。バルチェッローナは昨年も《アデライーデ》と比較するとばりばりとした声量を聞かせることはなかったが、たしかな歌をきかせていた。シラグーザは、昨年、日本で《清教徒》を歌ったときよりもずっと声に張りがあり、自信に満ちた歌いっぷりだった。バルチェローナはやせてしまったのではないかとも見えた。
《タンクレーディ》にはハッピーエンドの初演版(ヴェネツィア版)と、《タンクレーディ》が死んでしまうフェラーラ版があるのだが、今回はヴェネツィア版が上演された。
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