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2012年8月14日 (火)

ブルーノ・カニーノ、ピアノ・リサイタル

Caninobruno
ブルーノ・カニーノのピアノ・リサイタルを聴いた(ペーザロ、ロッカ・コスタンツァ)。

会場は町の中心部からほんの少し離れた城塞の跡。まわりは水は張ってないが、堀が巡らされており、高い壁に囲まれた中庭で演奏会は催される。

プログラムはロッシーニのピアノ曲とドビュッシーのピアノ曲が交互に弾かれるという珍しいもの。

ロッシーニの曲には、 Specimen d l’ancien regime とか Prelude petulant rococo とか Un regret .Un espoir というタイトルがついている。ドビュッシーも同様。

ロッシーニのピアノ曲はとてもユニークというか変わったもので、技巧的にはショパンのパロディのような音が聞こえてくるが、ショパンとは異なり、まったく情熱や感情を喚起しない。なにかパーティでの社交辞令が延々と続いているような感じで、こちらを感情的に巻き込んでいかない音楽なのだ。パリ時代の老いたロッシーニは、ロマン派拒絶宣言のような音楽を書いておきたかったのかもしれない。アイロニーのきいたもので、サティの先取りのような音楽でもある。

これと比較すると、ドビュッシーが、新たな音響、音階を駆使しながら、いかにロマンティックな感情を喚起する音楽を書いていたかが明解になる。

カニーノですら、ロッシーニは楽譜を見ながら弾き、ドビュッシーは暗譜であった。われわれになじみがないのは当然かもしれない。夕方7時半から始まったリサイタルは始まったころには空はまったく明るく、終演の9時近くになってようやく、空が暗くなった。空を見上げるたびに、眼の前の雲が移ろって、違う形の雲があらわれている。こういうコンサートも音楽そのものに没入するのではなく、感性がアートへ、そして自然へ、宇宙へと開かれていくようで心地よいものだった。


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コメント

前略、横浜の吉澤明氏より紹介をうかたものです。1978年にクレモナの学校に在学中、カニーノ氏の息子さんのために 子供用チェロを製作したことがあります。 昨年 横浜での、カニーノ氏のピアノセミナーでは、私のガールフレンドが通訳をし、久しぶりに再会しました。
 今年 8月3日にジェノバを 訪問した時、面白いことが起きましたので 報告したいと思いまして、メールしました。
 毎年ジェノバによりますが、ご存知かと思いますが、 町の中心に位置する 世界遺産の宮殿には、膨大な絵画と、パガニーニ氏が使用した ガルネリのヴァイオリンがあります。(ソプラノ ノーメ カノーネ)この楽器を目当てに毎年訪れるのですが。全部の絵画を見て回らないと、目的の楽器が見れないのです。 今回もめんどくさいなと思っていて、付属の本屋に行くと そのガルネリの資料集が販売していたので 喜んで購入し、 これでもういいと思いました。
店員のご婦人に、楽器は見たいが 時間がかかるのであきらめましたと話すと、あなたリュータイオでしょ? そうですと答えると
 ビリエットに何やら書いてくれ これを持って 最後の部屋の門番のところに行きなさい、とのこと その場所に行くと 門番さんが手招きして われわれを案内し ただで楽器を見せてくれました。
 帰りに 本屋に行ってお礼を言うと、あなた方のような人に 楽器を見せるのは 私たちの誇りですよ。 とのことでした。 まさにイタリアならではの エピソードでした。  吉田昇司 

投稿: 吉田昇司 | 2012年9月 2日 (日) 23時38分

吉田昇司様
 貴重なエピソードありがとうございます。
 見せる価値のある人には、特別な待遇をはかる。こういう柔軟性はイタリアらしいですね。

投稿: panterino | 2012年9月 3日 (月) 14時33分

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