若手指揮者ダニエーレ・ルスティオーニ
この項の情報は、2012年8月12日のメッサジェーロ紙のインタビュー記事に基づいており、それに筆者がペーザロで《ブルスキーノ氏》の上演を観たうえでの感想を交えたものです。
今、イタリアでは若手指揮者の三羽がらすというとミケーレ・マリオッティ、アンドレア・バッティストーニとダニエーレ・ルスティオーニを指すのだそうだ。
たしかに、大きく見ればアッバードの後、ムーティがスカラに君臨している間、誰が出てくるのだろう、誰か出てきてくれという期待は、シャイーやシノーポリによって一瞬期待を持たされたのだが、シノーポリは早々とあの世に行ってしまったし、シャイーもオランダでむしろ管弦楽の世界に深く入りこんでしまったように見える。
マリオッティ33歳、ルスティオーニ29歳、バッティストーニ24歳で、弱冠の差はあるがみな若い。若い優秀なオペラ指揮者がイタリアから3人も出てきたことは、どれだけ慶賀すべきことか。
イタリアやスペインが経済危機にあり、劇場に対する国家その他の補助金は年々大幅にカットされている。舞台にかけられるお金は確実に減り、豪華な舞台が減るのは確実だ。しかし、こういったきわめて優秀な指揮者が出現したことによって、生き生きとした音楽が生き延びる希望も、力強く生まれている。
ルスティオー二は今回がロッシーニ・オペラ・フェスティバルのデビュー。彼はペスカーラの音楽院を出たあとはしかるべき仕事がまったくなく歌手の付き人をして苦労した。そして若くしてロンドンに移り住み、そこでチャンスをつかんでいった。
これまでにすでにロンドンのコヴェント・ガーデン(ロイヤル・オペラ・ハウス)やスカラ座、フェニーチェ座、ボローニャなどで振っている。しかし彼の名声はイタリアよりも海外で高く、演奏依頼が海外からどんどん来ている。
ルスティオーニはこの点に関し仮借ない。「自分がイタリアで仕事ができるのは海外で活躍したからだ。ヨーロッパの他の国にはメリトクラシー(優れたものを評価するシステム)があるが、イタリアにはない。イタリアではしかるべき人の推薦がないと駄目なんだ」
《ブルスキーノ氏》は彼にとって7作目のロッシーニ作品とのこと。「オーケストレーションは水晶のように明晰そのもの。衝迫的なリズムを活かさねばなりません。ストーリー上感情に流れる場面に見えてもせんティメンタリズムに陥らないようにしなければならない。いつもリズムと感情、ダイナミズムと一さじの皮肉の間に均衡を保たねばならないのです」
「ロッシーニを指揮するのは単純ではない。シュトラウスよりも苦労です」
若手三人の指揮者について聞かれると、「マリオッティとの関係は最高です。よく電話をするし、意見を交換するし、彼のことは限りなく尊敬してますよ」。
チャンスがあればロッシーニ・オペラ・フェスティバルにまた駆けつけたいし、オペラ・セリアを振ってみたいとのことである。
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