《錆び》

ダニエーレ・ガッリャノーネ監督の《錆び》を観た(有楽町・朝日ホール)。
1970年代後半のトリノの郊外が舞台(実際のロケは別の場所)。団地があって、そのはずれに子供たちの遊ぶ空き地がある。そこに廃棄されたものを用いて子供たちは「城」を作っている。
そこを通りかかる医師。彼はよそから赴任してきたのだが、怪しげな雰囲気を漂わせている。
その怪しさを醸し出すのがオペラの音楽である。彼がメルセデスを自動洗車機で洗う時に流れるのは、グルックの《オルフェオとエウリディーチェ》であり、彼が原っぱでつぶやくように歌うのは、ドニゼッティの《愛の妙薬》の中のアリア「人知れぬ涙」である。
僕はこれほどまでに、オペラのアリアや楽曲が効果的にネガティヴに用いられたのを知らない。この子供たちに対する態度の怪しい医師の中にはオペラの音楽が詰まっており、つまりそれは現実を遊離した夢の世界(それは美しい夢かもしれないが悪夢かもしれない)に生きていることを示唆しているのだろう。オペラの持つ魅力、魔力をネガティヴに拡大するとそういうことになる。
映画では、子供たちと医師の間でおきた事件とその後の子供たち(すでに大人として生活している)が交互に並行して描かれる。
怖い映画だった。
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