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2012年3月18日 (日)

《ラ・ボエーム》

リセウ劇場でプッチーニの《ラ・ボエーム》を観た(バルセローナ)。

リセウ劇場は、バルセローナのもっとも観光客の集中するランブラス通り(数年前に比べ、レストランやバルの客引きが増えたような印象を受けた)にある。

1994年に全焼し、再建したもので、そういう点ではヴェネツィアのフェニーチェ劇場と似ている。こちらも出火の原因が電気的なものか放火なのかよく判らないようだ。

1階のサークル席で観たのだが、一幕でロドルフォとマルチェッロが舞台向かって右側で原稿を焼いたりする場面はまったく、あるいはほとんど見えない。フェニーチェもそうだが、リセウも伝統的な馬蹄形の構造を守ってつくっているので、平土間やパルコでも舞台正面の席からは舞台全体が見渡せるけれども、舞台の両脇からは見えないあるいは見えにくい場所があるのである。興味深いのは、20世紀末に建て直すときに、それでは全部の席から舞台が見えるような構造に建て直そうとはどちらもしていないことだ。

フェニーチェの場合、平土間(プラテア)以外はまったく伝統的な個室のます席になっているのに対し、リセウは馬蹄形の円周上にある席も低層階は壁のしきりがない。ただしやや上にいくと席に行くためにはドアを開けなくてはならず、しかもそれにはチケットをかざさねばならないという仕組みになっていた。おおまかに言えば、ロイヤルオペラとリセウが劇場の構造は似ている。

それにしても、フェニーチェもリセウも近代的で視覚的には合理的な劇場構造を採用しないのはなぜか?一つには、出火前のもとの劇場への愛着、伝統への愛着が大きいことがあるだろう。また、視覚的にはともかく、馬蹄形での響きには、日本などの合理的劇場にはない独特のホールが鳴っているという音響面での強みがある。さらには、歌劇場は社交的な場でもあるので、誰々が来ているということが他の客から見えることが重要であるが、日本のような劇場構造は多くのひとが前を向く構造になるのに対し、馬蹄形劇場では、舞台両脇の席はちょうど真正面に相対して互いによく見える。

そういった複数の理由があいまって、視覚的な不自由さを知りつつ、馬蹄形が再び採用されているのだろう。

実際、この日の終演後のカーテンコールで、ミミ役のアンジェラ・ゲオルギュが出てきた時、最大の拍手とブラボーが沸き起こったのだが、劇場全体がわんと鳴り響いた。一日だけで判断するのは危険かもしれないが、少なくともこの日の観客は、ロンドンの観客よりもはるかに熱い拍手を送っていた。

出演者は、ミミがゲオルギュ。ロドルフォはSaimir Pirgu. 素直な歌唱ぶりで好感が持てた。マルチェッロはアンヘル・オデナ.彼は声量も豊かで、歌い回しも的確。拍手も多かった。

ムゼッタはAinhoa Arteta. なかなか良かった。ショナールはGabriel Bemudez. コッリーネはカルロ・コロンバーラでさすが終幕の外套の歌は巧かった。

指揮者はビクトル・パブロ・ペレス。彼はカーテンコールで拍手と同時にブーイングを一番もらっていたが、判らなくはない。細部に思い入れが強く、そこで音楽の流れが中断しがちなのである。さあっと視界が開けるように、気持ちよく音が広がるのを期待しているところで、細やかな表情に執着して流れがよどんでしまうのだ。

そのかわり、弱音部やディミニュエンドで消え入るような部分はオーケストラの能力もあいまって繊細な美しさを遺憾なく発揮していた。プッチーニのスコアは感情表現は十分書き込まれているので、あんなにも感情込めてもらわなくてもといった面もあった。観客の反応はそれを反映していたのかとも思う。

ゲオルギュは、ややくどいくらいの演技と歌唱だが、安定しており、貫禄で、最大の拍手喝采をあびていた。

演出はジャンカルロ・デル・モナコで、これはすでにマドリッドの劇場でのものがDVD化している。古典的な演出であり、奇をてらったものではない。第一幕のおわりで、群衆がものかげから出てきていて、ミミとロドルフォが退場すると、明るくなってそのまま第二幕になだれこむところが新鮮だった。

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