« 腐敗広がる | トップページ | 国税庁、ブラックリストを準備 »

2012年2月21日 (火)

《ナブッコ》二期会公演

Nabucco_dsc4768_s
二期会公演《ナブッコ》の初日を観た(2月17日、東京文化会館)。

素晴らしい公演だった。若き指揮者バッティストーニが天才的指揮者であることがあらためて確認された。カーテンコールでの拍手も、ソリストを越えて一番多かったし、終演後の出待ち(サインをもとめて楽屋口で待っていること、あるいはその人たち)もバッティストーニお目当ての人が多かったようだ。

彼の指揮ぶりについては、基本的には、ゲネプロの感想に書いた通りである。ナブッコという曲は、ヴェルディがベルカントオペラから、つまりはドニゼッティやベッリーニから様々な語法を受け継ぎつつも、そこから大きくはみ出して、とんでもない曲、独自の響き、リズムを作り出してしまった曲である。

その独自の激しさ、爆発的なリズムに対しては、バッティストーニはこの上ない集中力と瞬発力で激しく燃焼する。そして、テンポもこれ以上オケがついていけないというギリギリまで追い込む。あらためて、東フィル(東京フィルハーモニー交響楽団)の演奏能力の高さに脱帽である。合奏能力としては、イタリアの本場でもここまでの演奏能力を持つオケは片手の指ほどではないだろうか。

無論、イタリアのオケは、あるいは音楽祭のオケでも、オペラを演奏している回数が多く、また身体へのなじみ方が違うので、それまでバラバラだったオケがここ一番の勘どころで、うならせることもままある。

それにしても、日本のオケはこれだけ演奏能力が高いのだから、すぐれた指揮者が振れば素晴らしい演奏ができるという当然といえば当然のことが立証されたわけだ。しかもバッティストーニが2月6日に来日したということで、10日ほどの練習でここまで出来るのか、ということに対して、指揮者に対しても、オケに対しても、驚きを禁じえない。練習初日、2日目、3日目とどのような化学変化が起こったのか、記録があればぜひ聞いてみたい、観てみたいものである。

同様に素晴らしかったのは、合唱団。合唱団の能力も大変高い。スカラ座は別格としても、イタリアの一流の歌劇場にまったくひけをとらないと思う。序曲が終わって、第一幕の冒頭、あんな早いテンポのナブッコはCDでも聞いたことがない。しかも僕の感覚では、ゲネプロよりも一層テンポが早かったが、合唱は見事に指揮についていった。合唱が単に音を正確に出すだけでなく、指揮者の意図を理解し、かつフレクシブルに変幻自在の指揮についていっているのだ。

オーケストラも合唱も、天才とは言え、若いエネルギーがはじける瞬間についていくのは目が回る思いのすることもあったろうと推察する。特に、木管楽器で細かいフレーズを繰り返すところなど、同情の他はない。しかしながら、《ナブッコ》のような曲で、特に、奔馬のように駆け抜けるフレーズでは、オケが楽々、やすやすと弾いていたのではエクサイティングではないのだ。もうギリギリ、とか、指が回りきれない、その感じが欲しいのである。これはちょうど、ロッシーニでブッフォな役がものすごく早口で口がまわりきれるかどうかのギリギリのところで歌うのを聴く快感にも似ている。
 
歌手はタイトルロールの上江隼人は発音が明晰であった。テノール・イズマエーレの松村英行は、ビブラートがかかる声(たとえば女性ではあるが、アントニエッタ・ステッラのように)で、独特の叙情性のある声。バス・ザッカリーア(ザッカ—リアではない、念のためZanichelli などの辞書で確認ずみ)はジョン・ハオ。堂々とした声。ソプラノ・アビガイッレの板波利加は、音域によって音色の変わるドラマティックな声でメゾ的な声である。その他メッゾ・フェネーナの中島郁子も好演。

今回の公演では、指揮者が超一流で、東フィルとの邂逅は、1954年のカラヤンとN響との出会いにも匹敵する事件だったと考えるが、東フィルは見事にその事件を生きた。快挙である。また、そこに最上の花を添えたのは、合唱団であった。ナブッコは、主要人物もさることながら、合唱がもう一つの登場人物のように重要な役回りを演じるのだ。Va pensiero も見事であったが、終幕までまったくだらけることがなく、通常、最終場面はふと気がぬけてしまうのだが、そこでも充実した音楽を聞かせてくれた。
このような公演に出会えたことは本当に幸運なことであった。感謝。
 


|

« 腐敗広がる | トップページ | 国税庁、ブラックリストを準備 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/144339/54040036

この記事へのトラックバック一覧です: 《ナブッコ》二期会公演:

« 腐敗広がる | トップページ | 国税庁、ブラックリストを準備 »