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2012年2月16日 (木)

ヴェルディが蘇った

Vol288_01_03
ヴェルディのオペラ『ナブッコ』を観た(東京文化会館)。

二期会の公演のゲネプロである。なんといっても注目は、指揮者のアンドレア・バッティストーニ。

昨夏に何の予備知識もなしの状態で、イタリアのマチェラータの夏の音楽祭で『リゴレット』を聞き、若い(24歳)のにとても優秀な人がいると強い印象を受けた。その場にいた日本人何人かともお話したのであるが、みな高い評価であった。まさに、衆目の一致するところというわけだ。

イタリア人もそう考えたことがわかるのは、彼のスカラ座デビューが決まったことだ。1987年生まれであるから、24歳あるいは25歳でのスカラ座デビューとなる。

グイド・カンテッリ、クラウディオ・アッバード以来の天才指揮者あらわる、ということであろう。

さて、二期会の『ナブッコ』であるが、オーケストラは、東京フィルハーモニー交響楽団。通常、日本のオケは、合奏能力は優秀なのだが、イタオペのノリ、とりわけリズム感が弾けないことがあるのだが、今回は違う。素晴らしい演奏である。指揮者の指示が的確であれば、もとの合奏能力が高いだけに、リズム良し、テンポ良し、ダイナミズムがあって、しかも縦の線もこれだけ早いテンポの部分があるのに崩れない。

バッティストーニの指揮は、一言で言えば、とても心地よくメリハリが効いている。朗々と伸びやかに歌わせるところと、集中して熱のこもった強音、また、ナブッコ特有のタッタカ、タッタカというリズムにのって馬が駆けるようにアッチェレランドで盛り上がるところ、それぞれ鮮やかに使い分ける。

オーケストラも歌手もいつも手綱がきついわけではなく、歌いたいように歌わせているところもある(ように見える)。巧みなのは、アリアでゆったりとしても、アリアとアリアをつなぐパッセージでさっとテンポをあげ、決して音楽がだれないことである。また、盛り上がったところで、旋律部分だけでなく、伴奏部分のリズムの刻みを非常に大事にして活かすのがうまい。リズムの刻みを大事にして、テンポが遅くなるのではなく、必要とあれば、ものすごいスピードで刻んでいくので、生理的にエクサイティングであり壮快な快感が聴くものの身体を駆け抜ける。

『ナブッコ』が、百年以上前の古典というよりも、今ここで書き上げられたばかりの音楽として蘇っている。まさに、同時代の音楽だ。

こうした壮快なリズム感、駆け抜けるテンポは、バッティストーニの前の世代よりは、むしろ1950年代、60年代に活躍した指揮者たちのそれに近いと思う。

歌手は、18日と同じキャストだったと思われる(確認はしていない)。ザッカリーアの斉木健詞が大健闘。

ナブッコは、ストーリーが、日本人にとってはやや判りにくいかもしれない。二つのグループが対立している。
一つは、バビロニア側。もう一つは、エルサレム側。こちらがユダヤ人で、捕虜となって、いわゆるバビロン捕囚にあって、故郷を思うわけで、合唱の名曲Va pensiero (行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って)は、とらわれの身のユダヤ人たちが故郷を思って歌う。この名曲、今回の公演ではビスを前提とした演出されているらしい。一度目と二度目で、合唱団の配置、並び方が全く異なるのである。それによって、声の広がり、響きが異なるのが一聴瞭然なのだ。どう異なるのかは、観てのお楽しみとしておこう

バビロニア側の王がナブッコ(ネブカドネザル)。娘が二人いて、アビガイッレとフェネーナ。

ここからがいかにもイタリアオペラの常道ですが、アビガイッレもフェネーナも、あろうことか、敵方のユダヤ側のイズマエーレのことが好きなのだ。イズマエーレは、エルサレム王の甥で、フェネーナと愛し合っている。当然、アビガイッレは横恋慕して、三角関係。

だからストーリーとしては、バビロニアとエルサレムが戦う、それは政治的な争いでもあり、宗教的な対立も含んだものとなっている。

ザッカリーアは、ヘブライ人(ユダヤ人)の大祭司である。バスで迫力のある歌がいくつもある。

主人公のナブッコは、バビロニアの王で、ユダヤの神など何するものぞと、宗教的な敵意をユダヤ側(エルサレム側)に抱いて、俺を王ではなくて、神と思え、というと雷に打たれてしまう。ナブッコの青山貴は、ブルゾンを思い起こさせる端麗な声。

アビガイッレも、横恋慕、嫉妬、野心に燃える激しい性格を岡田昌子が、熱く歌っていた。

アビガイッレといえば1980年代にスカラ座がムーティの指揮で日本公演をしたときのアビガイッレは
ゲーナ・ディミトローバでスカラ座のオケが大音量で鳴らしても、スカラ座合唱団がフォルテで歌っても、そこを突き抜けて響き渡る驚嘆のほかはない声だった。

しかし、今回の二期会の『ナブッコ』は、1988年のスカラ座公演にまさるとも劣らない素晴らしい公演であると思う。

演出は、ダニエレ・アッバード。舞台装置は、パルマ王立歌劇場のものとのこと。

この若き指揮者の指揮ぶりを日本でこれほど早く実際に観られるのは、幸せという他はない。二期会関係者の慧眼に敬意を評したい。


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