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2011年9月24日 (土)

《清教徒》

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ボローニャ歌劇場の来日公演《清教徒》(ベルリーニ作曲)を観た(東京文化会館)。

僕が観たのは水曜日と土曜日。今回の《清教徒》はテノールのフローレスが呼び物で、それを目当てに切符を買った人も多いはず。僕もそうだ。水曜日の代役はセルソ・アルベロ。土曜日は、シラグーザだった。

水曜日は台風直撃で、東急線などが止まり、来られなかった人も多いようで、会場は空席が目立った。開演は30分遅らせ7時からだったが、それでも遅れてきた人も多かった。

《清教徒》を生で観るのは藤原歌劇団で観て以来なので20年ほど経過している。あらためて、よく出来た曲だと感心。バリトンのアリアのコーダなど、ヴェルディがすっかりまねているし、男性の二重唱(バスとバリトン)もいかにここから多くをヴェルディが吸収したかを思わずにはいられない。

逆にベルリーニはロッシーニのオペラ・セリアからよく学んでいる。バスとバリトンの二重唱で、同じメロディーを二人が繰り返す構成などそっくりであるし、オーケストレーションもあちこちで似た響きが聞かれる。だからといって、ベッリーニもヴェルディも、ベッリーニらしさ、ヴェルディらしさ、それぞれの個性はあふれるほどに持っているわけで、他者から学ぶことでそれが損なわれるようなものではないのだ。そこにオリジナリティーと個性の複雑な関係があるし、また、ロッシーニからベッリーニ(およびドニゼッティ)、ヴェルディへ脈々と受け継がれていくイタリア・オペラの流れも見えてくる。

指揮のミケーレ・マリオッティは30代の若さであるが、実に見事に振る。決して強引ではなく、歌手にたっぷりと歌わせたいところは歌わせ、曲の終わりでさっとアッチェレランドをかけ引き締めいくのは、マチェラータで聞いた20代の若手指揮者アンドレア・バッティストーニと共通している。フレージングにしても、なめらかにレガートで歌わせるところ、スタッカートぎみにリズムを躍動的に刻んでいくところ、力強くオケを鳴らすところと切り替えが一瞬で、しかもしなやかなのである。マリオッティといい、バッティストーニといい、若手の非常に優秀なオペラ指揮者の出現は大変嬉しいし、高く評価したい。(ちなみに、バッティストーニは来年、来日して二期会で《ナブッコ》を振る予定)。

歌手では21日(水曜日)は、エルヴィーラ役のデジレ・ランカトーレが大健闘。彼女の強みはコロラトゥーラであるが、演技も所作が様式にはまっていて、観ていて気持ちがよい。ベッリーニのベルカント・オペラというきわめて様式的な音楽に整合的な演技なのである。声質に関しては、高音部と低音部で音色が変化するが、慣れてしまうとそれも彼女の個性かと思う。技巧的には安心して聞いていられる。

テノールのセルソ・アルベロはアルトゥーロというエルヴィーラの恋人役なのだが、演技、歌ともにやや表情が硬かった。最高音は立派に出ていた。いきなりフローレスの代役ということでやむを得ないだろう。土曜日のアントニーノ・シラグーザは、歌い回しは実に巧み、表情づけも文句なし。観客期待?の最高音は、やや詰まって苦しそうだったが、音ははずれずひっくりかえらなかっただけでも良しとすべきだろう。

エルヴィーラの父ヴァルトンは森雅史。風采も堂々としており、声も良く、まわりのイタリア人と違和感なく立派な歌だった。

エルヴィーラの伯父ジョルジョはニコラ・ウリヴィエーリは姿も良く、声も朗々と響き、フレージングもうまい。しみじみと聞かせるところは聞かせて、低音部では一番聞かせていた。

アルトゥーロの恋敵リッカルド役のルカ・サルシは、水曜日のほうが良かった。この人、声は大きく、なかなか立派な声。いま少し器用に表情を使い分けてくれればと思うのだが。

全体としては、清教徒カルテットと呼ばれる主要な4人の歌手の力量が相対的にそろっていて、しかも指揮、オケがきびきびとしていてまったくだれるところない演奏で非常に満足がいった。

フジテレビが終演後、観客が花束を投げるのを制していたのはいかがと思う。ヨーロッパやアメリカの劇場では良くみられることであり、むしろ歌手への最高のオマージュなのだ。録音や撮影の規制とは、区別してもらいたいと思う。

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