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2010年12月20日 (月)

オペラ《奥様女中》

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ペルゴレージのオペラ《奥様女中》を観た(東京九段・イタリア文化会館・アニェッリホール)。

この日のプログラムは2部構成で、第一部は、劇中音楽会と称し、作曲家ペルゴレージの生涯を彼の音楽を引用しながら紹介する劇。演出家のダリオ・ポニッスィ氏が自らペルゴレージを演じ、他に4人の女性歌手(川原慶子、藪田瑞穂、小田切一恵、相羽紗希)が登場する。

第二部が、オペラ・ブッファの傑作といわれる《奥様女中》(La serva padrona)である。

今年はジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710ー1736)の生誕300年であり、それを記念して《奥様女中》の上演もいくつかあったようだ。

奥様女中に登場人物は3人しかいない。セルピーナというお女中さん、ウベルトという主人、そしてヴェスポーネという召使い。セルピーナが、ウベルトに結婚を迫って、お女中から奥様になりあがるという物語である。ヴェスポーネは黙り役で歌わない。というわけで、歌うのはウベルト(立花敏弘)とセルピーナ(高橋薫子)。ヴェスポーネ(ダリオ・ポニッスィー演出も)は、歌わないが、演劇的には必要な役回り。

今回の上演では、指揮が大浦智弘、ピアノが若杉千晶。通常は、小編成の管弦楽であるが、今回のピアノ上演は大変活き活きとしたリズムの好演であった。

ペルゴレージの音楽は、モーツァルトの先駆者的な上品さ、エレガンスを持っているが、同時に、オペラ・ブッファの躍動感が出なければ面白くない。軽やかさや諧謔味を兼ね備えなくてはならないのであるが、今回のものは大変上質かつ愉快な演奏だった。

上演を楽しいものにしていたのは、タイトルロールである高橋薫子(のぶこ)の快演ぶりだ。声よし、顔の表情よし、動きよし、リズム感、声の表情、どれをとっても最高の出来で、心の底からオペラ・ブッファの醍醐味を堪能した。会場にも何度も笑いがあふれ、これがオペラ・ブッファなのだと納得。

無論、セルピーナを引き立てるウベルト(立花敏弘)も熱演で、セルピーナが他の男と結婚すると宣言(もちろんウベルトの気を引くためのお芝居ーーオペラでは、オペラ自体が芝居なのだが、その中でさらに芝居を演じる人物が良く出てくる)した時の嘆き声、そしてセルピーナに結婚をせまられてどうしようかと迷う際の演技など秀逸であった。舞台装置は単純なのだが、枠組みだけですりぬけられる大きな姿見の鏡があって、ウベルトが迷う際には、鏡の中の自分と、外の自分が異なった意見を交わしあうのである(歌手は、枠組みのあちらとこちらを行き来する)。

ペルゴレージのアリアや二重唱は、同じメロディーの繰り返しが多い。単純な繰り返しが多いので、すぐにメロディーを覚えられるという利点はあるのだが、逆に単調になってしまう場合もある。今回の上演では、高橋、立花両者ともに、パルランテ(語るように歌う)を巧みに用いて、表情に変化を与え、少しも飽きさせるところがなかった。

それどころか、終幕で、二人が結婚に合意して幸せを歌い上げるところでは、繰り返しの中で突如、二人がおばあさんとおじいさんになって歌うところなど意外性といい、チェンジアップといい見事であった。しかも、ふと考えれば、モーツァルトの《魔笛》のパパゲーノ、パパゲーナを想起させているわけで、さりげなく深い。

また、特筆すべきは、高橋、立花両者のイタリア語の明晰さで、言うまでもなく、オペラ・ブッファは言葉のやりとりで笑わせる部分もあるのだが、レチタティーヴォだけでなく、アリアを歌っている時にも非常に言葉が聞きとりやすく、しかも適切な表情がのっているので、こちらも劇に自然に入り込めた。

この公演が一日限りなのはとても惜しい。

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