リヒテルのもう一つの《平均律》

リヒテルの《平均律》のもう一つのCDを聴いた(POLO CL4B-86080-2).
これは、変わったCDで、中国製のCDで、解説も中国語である。1973年のインスブルックでのライブ録音で、一度は市場に出たもののすぐに販売が停止され、その後は幻の存在となっていたという。
今回、入手して聴いてみたが、リヒテルのスタジオ録音にくらべかなりテンポが早い。丁寧な表情づけや音の粒ぞろいを整えることを多少犠牲にしても、感興のおもむくままに指を走らせているところがあって、スイング感や疾走する快感はこちらの演奏に分がある。
スタジオ演奏とライブ演奏の一長一短ということになろうが、疾走する演奏があるだけに、ゆっくりと演奏される曲とのコントラストがあって、生理的に気持ちよく聴ける。演奏が内容的に充実していることは言うまでもない。
ただし念のため記しておけば、ライブ演奏であるから、音のバランスの乱れやミスタッチがないわけではない。オペラのライブ録音もそうであるが、ライブでは声の出方が常に万全とはいかない。しかし、曲の勢い、流れというものは、ライブならではの味わいがあり、僕個人としてはライブ録音が好きである。リヒテルは、スタジオ録音も素晴らしいが、興がのった時のライブはまた格別の味わいがあると思う。熟考された解釈に、動物的躍動が加わるし、魂の熱がピアノの音という形をとってほとばしりでる瞬間がある。
このCDは4枚組で、バッハの平均律の第一巻、第二巻全曲がおさめられている。
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コメント
今日リヒテルの『バッハ平均率』古いほうの盤を入手し夢中で耳傾けています。ポッリーニとはひと味ちがうバッハ。どちらも魅了されます、素晴らしい! 中国盤はいまだ入手できておりません。そのうち。楽しみ!です。リヒテルはひそかに聴いていました。
ファンです、ひそかな、ファンです。いつも心躍ることおおしえいただき感謝あるのみです。
それから、シミオナートの悲しいお報せありがとうございました。悲しいです。
投稿: vit.rio | 2010年5月14日 (金) 20時46分
vit.rio さん
リヒテルは、素晴らしい演奏家でしたね。
個人的には、『展覧会の絵』のライブ録音も忘れられません。
投稿: panterino | 2010年5月15日 (土) 21時47分