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2010年2月17日 (水)

CD《椿姫》

Walhallwlcd0284
《椿姫》のCDを聴いた。

新譜だが、演奏は半世紀以上遡る歴史的名演で、1955年1月1日のメトロポリタン歌劇場のライヴである。渋谷のタワーレコードで購入したが、ネット上でも販売しているようだ。レコードナンバーは、WLCD0284.

ここでの聞き物は、何と言ってもバスティアニーニのパードレ・ジェルモンである。主役のヴィオレッタは、リチア・アルバネーゼ。アルフレードは、ジャチント・プランデッリ。指揮は、アルベルト・エレーデ。

エレーデの指揮は、過小評価されていると思うが、このCDでも実に適格で的を射ている。第一幕の舞踏会のリズムがだらけず間然とするところがない。アルバネーゼがたっぷり歌ってテンポを落とすと、合唱の部分でさりげなくテンポを戻していく。それが、唐突でなく、自然なので、注意して聴かなければ気がつかないほどなのである。エレーデの指揮では、これみよがしのオケの鳴らし方はなく、このテンポ、このリズムは当然だとこちらに腑に落ちるやり方で、音楽は進んでいく。めりはり、表情の濃淡がちょうと良いのである。

そのことによって、余計なことに気をとられずに、オペラの歌に、ストーリーに観客は入り込んでいけるのである。最高の職人芸と言えよう。

このCDで面白いのは、アルバネーゼの歌唱スタイルがやや古風で、それに比してバスティアニーニの歌唱が非常にモダン、即ち、ヴィヴラートやポルタメントをかけずにインテンポで歌っていく。プランデッリはその中間といったところ。このスタイルの変わり目にあって、異なった歌唱スタイルが掛け合いをしているのを聞き比べることが出来るのである。

さらに、ボーナストラックには、あの伝説的なスカラ座での《椿姫》(マリア・カラス、ディ・ステーファノ、バスティアニーニの共演で、ヴィスコンティが演出、1955年5月28日のライブ)の一部が収録されている。

続けて聴くと、カラスとアルバネーゼの歌唱スタイルの相違は歴然としている。

1955年は、バスティアニーニも若く、後年の病気の影もなく、声も申し分ない。

現代の演奏になにか物足りなさを感じている人にはおすすめの《椿姫》である。


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コメント

  感激で声も出ません。さっそく購入いたします。嬉しくて跳び上がります。何回も聴きました『椿姫』。楽しみが増えました。ふるえます。
 伝説[椿姫]も楽しみです。それにしてもおのれの無知識も泣けて参りました。
 これから勉強です。よろしくおねがいいたします。

投稿: vit.rio | 2010年2月18日 (木) 13時15分

vit.rio さん

僕も、このCDは知りませんでした。初出とのことで、商業的なCDとして流通するのは初めてだと思います。

このCDだけでなく、メトロポリタン歌劇場から、過去の埋もれた名演(の録音)がよみがえることを期待したいですね。

投稿: panterino | 2010年2月18日 (木) 23時03分

 購入いたしました。ぐうぜん、バスティアニーニの『プロヴァンスの海と陸』を最初に耳にいたしました。見当をつけて...、CDをかけたら...みごと当たりました。
 みごとな上演です!。これから楽しみです、アルバネーゼもプランデッリも初耳ですので、むかしの音楽の、歌唱の良さを味わいながら拝聴しています。
 

投稿: vit.rio | 2010年3月 8日 (月) 14時39分

vit.rio さん

僕もバスティアニーニの歌がこのCDの聞き所だと思います。
パードレ・ジェルモンは、台本の上では、アルフレードとヴィオレッタの仲を、プチブル的な価値観をふりかざして引き裂く嫌なおじさんなのですが、バスティアニーニの歌で聴くと、こういう敵役にも、ヴェルディは高貴さを与えていると思えます。

投稿: panterino | 2010年3月 8日 (月) 16時56分

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