佐野成宏テノール・リサイタル
テノール歌手佐野成宏(以下、敬称略)のリサイタルを聴いた(4月24日、紀尾井ホール)。
演目は3部からなり、第1部はアンダルシアの情熱と題され、スペイン歌曲およびオペラ『カルメン』から。
第2部はイタリアの春と題され、トスティやティリンデッリ、レオンカヴァッロの歌曲。知名度の高くない歌曲にも聴き応えのある曲はある。佐野は、丁寧な歌唱でじっくりと聞かせてくれた。
第3部は、オペラ『トスカ』セレクションと台紙、バリトンの原田勇雅が加わり、ピアノ伴奏(佐藤正浩)で、服装はリサイタルの時のままだが、多少の身振りを交えて演じつつ歌った。佐野は、ここではオペラという演目の性質の違いを考えてか、声量をあげてカヴァラドッシを歌い上げた。歌曲を聞いた後では、曲自体の表情の豊かさに驚く。
佐野の歌は、発声も表情づけもとても上品である。アンコールでナポリ民謡を歌う時でさえ、ある一線をくずすことなく、きちんとした曲の姿を保ち、演歌的にはならない。オペラや歌曲を歌うときにも、過剰な感情表現、あるいは声に泣きが入ることはまずないのである。
こういった姿勢が彼の歌曲を聴き応えあるものにしていると思う。
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