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2009年5月 1日 (金)

《見わたすかぎり人生》

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《見わたすかぎり人生》(パオロ・ヴィルツィ監督)を観た(有楽町朝日ホール)。

ストーリー展開の巧みさに舌をまく映画だ。扱っている題材は、プレカリアート(非正規労働者)の生活で、扱いようによっては地味で暗くなってしまいそうだが、この映画は、エネルギーに満ち、何度も笑え、しんみりもでき、ドキッとする映画になっているのである。

舞台は、いかがわしげな商品を売りつけるコールセンター。若い女性たちが、マニュアルに基づいた電話攻勢で、主婦にアポイントメントをとり、営業部員がそこに出かけていって売りつけるという仕組みだ。

主人公マルタは、大学の哲学科を優等で卒業するが、就職がなく、偶然ベビー・シッターの職を見いだす。その母親がつとめていたのがこのコールセンターでマルタも、そこで働くようになり、めきめき頭角をあらわす。

そのコールセンターのリーダー、ダニエーラをサブリーナ・フェリッリが演じているのが豪華といえば豪華なキャスティングである。マルタ役のイザベッラ・ラゴネーゼは、この映画が初出演で、本人は、上映後の観客との質疑応答で、自分が選ばれたのは、映画に世界に慣れていなくて、戸惑い、なじめずにいる(spaesata) 状態が、マルタがコールセンターで戸惑っているのと照応していることになるから、というのもあったろうとしている。

このストーリー展開が巧みなのは、ちゃんと非正規労働者を対象にした労働組合CGILの活動も描き込まれているのだが、説教くさくはなく、それどころか、組合員ジョルジョは女にだらしなかったりして、チャーミングでありつつも冴えない男(ヴァレリオ・マスタンドレア)なのだ。

コールセンターでは社員のやる気を高める歌や体操があって笑えるが、それは苦い笑いだ。その異様な世界にのめり込める人、のれない人が出てくる。そういったことも、うまくストーリーに溶け込ませて書き込んであるのである。

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コメント

拙Blogで、この映画を取り上げたので、よかったらTBお願いいたします。

私は過去のイタリア映画祭で上映されたヴィルツィの作品と比べると、当作品いまいちという感じで感想書いたのですが、見ている最中
>何度も笑え、しんみりもでき、ドキッとする映画
だったことは、確かです。

>非正規労働者を対象にした労働組合CGILの活動
あれは実在のの組織だったんですか!実は、非正規雇用の実態を取材中のテレビ局のディレクターだったのかしら、とか想像していた私は相当毒されているようです…。

エンド・クレジットが、偶然かもしれませんが、日本の青春映画の名作と同じ趣向だったのが、私には楽しかったです。

投稿: なつ | 2009年5月 4日 (月) 23時22分

なつさん

TBありがとうございます。

CGILと字幕に出たような気がしたのですが、実際には、実在する組合名を使用していたのか、それに近い非実在の組合名(たとえば、日本で新聞名を毎朝新聞とするように)を使用していたのかは、確かではありません。いずれにせよ、イタリアの労働組合は皆それぞれプレカリアート(非正規雇用)の問題に取り組んでいることは確かです。

でも、映画の中では、労働組合のまじめな取り組みが、必ずしも有効でなく、マストランドレア扮する組合員も、人は良さそうだけど、女好きで、主人公を失望させていましたね。そういった柔軟な扱いが、イデオロギー的でなく、人間的なドラマとして皮肉やユーモアあふれるものになっていたと思いました。

投稿: panterino | 2009年5月 5日 (火) 18時55分

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