« アレッサンドロ・バリッコの講演(1) | トップページ | ボルツァーノ県地方選挙、Svpの勝利 »

2008年10月27日 (月)

アレッサンドロ・バリッコ講演会(2)

Alessandro_baricco
アレッサンドロ・バリッコ(Alessandro Baricco)の講演を聴いた(イタリア文化会館、九段)。

今回は、オペラに出てくる広場がテーマである。イタリア語のタイトルは、‘Or tutti a me! la piazza come culmine drammatico nel melodramma' である。オペラのクライマックスで広場がどう用いられるか。そこで、皆集まって、とか来てください、といって、カップルが派手に言い争うのが、いかにもイタリア人らしいというのがバリッコの考えである。

この講演では、三つのオペラの場面をDVDの映像で見ながら、あるいは止めて、バリッコが解説を付けていくという形だった。設備があるせいもあって、通訳はイヤホンを用いた同時通訳だった(こういう形の時はイタリア語に集中したいので、僕は通訳を聞いていない)。

以下、講演の要約。

オペラを理解できれば、イタリア人を半分理解できる。

イタリア人にとっても、オペラにとっても、広場(piazza)は大変重要な場所である。オペラの中では、しばしば、カップルの軋轢が広場で展開され、それに対する人々の反応が合唱によって示される。

もちろん、これは、逆に言えば、合唱の出番をつくっているわけである。

ベッリーニの『ノルマ』。古代ローマの物語で、女主人公のノルマは、巫女ので、神聖で、触れてはならない存在のはずであったが、実際には、ローマ人との間に2人の子供を密かにもうけていた。

相手はローマの総督ポリオーネである。

ノルマは部下の巫女アダルジーザから実はローマ人と恋に落ちたとの告白を聞く。そして、アダルジーザの恋の相手がポリオーネであることを知り、激怒する。

ノルマは、皆を広場に集め、ローマ人を皆殺しにせよと告げる。そこへ、ポリオーネが引き立てられくる。皆は、ノルマがポリオーネを殺すことを望むが、ノルマはここに及んで、ためらい、人払いをして、ポリオーネと二人きりになる。

こうした広場への人の出入り、ノルマが人々を呼び集めたり、人払いをして、ポリオーネと二人きりになったりする変化を、バリッコは、しぐさをまじえて、呼吸にたとえていた。吸い込んだり、吐いたりしているわけである。

二人きりになったポリオーネとノルマは愛を確認する。二人とも死ぬということになって始めて、愛が確認されるのである。

ベッリーニの場合、この「呼吸」は、ゆっくりとしたスピードの呼吸である。

『椿姫』では、アルフレードは良家の息子だが金がない。第二幕で、その父ジェルモンが出てくるが、ヴィオレッタとあっても相手が娼婦のせいか、帽子もとらない。二幕二場は、パリに戻り、再び、アルフレードとヴィオレッタが同じ場にいる。二人は惹かれあっているが、避けてもいる。二人が惹かれているが、解決は得られないという緊張を表した音楽が出てくる。ここでは、人々を呼び出すのは、アルフレードで、この女が自分のために使った金を返してやるといって、皆の前で、札束をヴィオレッタに叩き付ける。この場では、二人きりになったり、アルフレードが皆を呼ぶ場の転換は非常に早い。このスピードは映画がでて始めて追いついたもので、きわめて早い「呼吸」である。

アルフレードの愚行に対し、そこへ登場した父ジェルモンは、いかにも父親らしく説教をする。父は聴衆の存在を意識して息子に説教をするのである。

オペラの観客は、しだいに、こうした早い「呼吸」になれ、それを期待するようになる。

プッチーニの場合、より複雑になる。

マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』では、すべてが広場で展開する。復活祭の日には、広場に神が登場する。キリスト像が持ち込まれるのである。ところが、サントゥッツァは、この場から閉め出されている。

こうして、広場への人々の出入り、あるいは呼び出したり人払いをしたりというリズムは、時代によって変わる。この「呼吸」は、時代によって趣味が変わるので、変わるのである。

|

« アレッサンドロ・バリッコの講演(1) | トップページ | ボルツァーノ県地方選挙、Svpの勝利 »

コメント

 panterinoさま、

 「広場」。街の核。
  共感しました。
 「広場」はキリスト教思想を体現したものだ、とも思います。とある日本のキリスト教作家はかならず広場で発言する。
 そう思うといろいろ思い当たることがある。
 言語構造からも来ている、と。

 それから、ヴェルガの存在のだいじさもおしえていただきました。
 
 

投稿: sandrara | 2008年10月28日 (火) 17時32分

sandrara さん

「広場」に人が出入りするさまを、呼吸に見立てたところが、バリッコの議論の面白いところでした。その呼吸は、緊張の高まり、弛緩でもあるわけです。

 ヴェルガは、プッチーニとの共作の案もあったわけで、「カヴァレリア・ルスティカーナ」はもちろん、ヴィスコンティの映画「揺れる大地」の原作者でもあり、いろんなところで名前が出ますね。

投稿: panterino | 2008年10月28日 (火) 22時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/144339/42926062

この記事へのトラックバック一覧です: アレッサンドロ・バリッコ講演会(2):

« アレッサンドロ・バリッコの講演(1) | トップページ | ボルツァーノ県地方選挙、Svpの勝利 »