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2008年6月21日 (土)

マトゥリタで、モンターレの詩に関し出題ミス

200pxeugenio_montale マトゥリタ(高校卒業試験)で、詩人モンターレの詩が出題されたが、出題文の詩の解釈が間違っていた(6月19日、コッリエーレ・デッラ・セーラ)。

この詩は、モンターレがロシアのバレエダンサーの美に打たれて詠んだものなのだが、出題文中では、それを女性として捉えているのである。

この詩は Ossi di seppia (烏賊の骨)の中の一篇で、次の通り:

Ripenso il tuo sorriso, ed e' per me un'acqua limpida
scorta per avventura tra le petraie d'un greto
esiguio specchio in cui guardi un'ellera i suoi corimbi;
e su tutto l'abbraccio d'un bianco cielo quieto.

Codesto e' il mio ricordo; non saprei dire, o lontano,
se dal tuo volto s'esprime libera un'anima ingenua,
o vero tu sei dei raminghi che il male del mondo estenua
e recano il loro soffrire con se' come un talismano.

Ma questo posso dirti, che la tua pensata effigie
sommerge i crucci estrosi in un'ondata di calma,
e che il tuo aspetto s'insinua nella mia memoria grigia
schietto come la cima d'una giovinetta palma...

これで全部、12行の詩である。無題。

君の微笑みを想うと、澄んだ水のよう
たまさか、河床の石切場がかいま見え、
小さな鏡で、西洋木蔦とその花房が見える、
静かな白い空をそっくりと抱えた花房。

それが僕の思い出だ。ああ遠くの人よ、
君の顔から、自由で純粋な魂が現れ出るのだろうか、
君は、この世の悪が憔悴させる流浪の人、
その苦しみを、お守りとして持ち運ぶのか。

が、これだけは言える。君の思いにふけった姿は、
気まぐれな慷慨を、静かな波間に沈め、
君の姿は、僕の灰色の記憶にそっと入り込む
若い棕櫚の花房のようにすっきりした姿。

これに a K.と言う献辞があるのだが、このKはBoris Knisaseffというロシアの男性のバレエダンサーだったのである。

出題文では、「第一連で詩人は、一連の象徴的イメージの中に、一方では、その現実の姿を、もう一方で、女性像(figura femminile)の救済的役割および心慰められる面を描いている。(中略)女性の思いでは、その顔と微笑みの中に濃縮されている…」とあって、この詩で描かれているのが、女性であることを前提としているのである。

モンターレの晩年の伴侶で、詩人のマリア・ルイーザ・スペッツァーニ(84歳、モンターレは彼女を Volpe と呼んでいた)は、この詩がロシアのバレエ・ダンサーを詠んだものであることを証言し、しかしホモセクシュアルな性質のものではないと確言した。

彼女とモンターレは13年をともにした。スペッツァーニは言う、「彼を知ったのは、1949年1月14日、トリノのカリニャーノ劇場でのこと。彼は会議をしていて、わたしはいやいやながら行ったの。彼を知りたくなかったの、彼について、嫌な話を聞いていたの、女嫌いで、がめつくて、悪い人だって。私は、『烏賊の骨』が大好きで、全部暗唱していて、幻滅したくなかったのよ」

知り合って、ある時点で、モンターレは彼女との結婚を決意する。しかし幻滅させたのは彼女の方だった。彼女とモンターレの「大いなる友情」(grande sodalizio)をそっと見守ってきた婚約者と結婚したのである。

しかし結婚しても、モンターレのところに通うことは続き、モンターレは彼女を Volpe (キツネ)と呼んで、彼女に一つならず詩を献呈した。「私のために、たくさんの素晴らしい詩を書いてくれたわ。それが詩集Bufera e altro(嵐その他)の一部になってます。そして‘Da un lago svizzero'(スイスのある湖で)は、アクロスティックで、私の名前が各行に配置されているのよ」

また、近々、モンダドーリ社からモンターレが13年間に、彼女に宛てた360通の手紙が刊行されるとのことである。

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コメント

 panterino様、
 興味深く拝見しました。出題ミスは英語にもある、とのこと、問題ではありますが、しかしよくあることでもあり、たいへんよくあること、であり、興味深いニュースです。モンターレのこと、嬉しいです。さっそく入手いたします。感謝。よくぞこれだけ資料にあたられた、と感嘆。これからもよろしくお導きのほどを。

投稿: kudotomoko | 2008年6月21日 (土) 11時00分

kudotomoko様

おっしゃる通り、出題ミスは残念ながらよくあることですね。

おほめいただき恐縮です。モンターレおよびマリア・ルイーザ・スペッツァーニに関わる伝記的事実およびスペッツァーニの談話はすべて記事にあったもので、モンターレの書簡集が近々公刊されるというのも、スペッツァーニの談話中の言葉を要約したものです。

意外なことに、詩も全文、新聞に掲載されておりました。ただし最終行の行末の…が(後略)を意味するのか、本当に詩がそういう形で終わっているのかは私がチェックし、また、詩に a K. という献辞があるのも確認しました。蛇足ながら、詩の訳文も拙訳でございます。

投稿: panterino | 2008年6月21日 (土) 17時38分

 panterino様、
 じつはその訳に感心しておりました。いちばん書きたかったこと。
 訳は至難です。よくぞ!、と思いました、思います。 わたしも至難業に
はげみます。よろしく!

投稿: kudotomoko | 2008年6月21日 (土) 17時44分

kudotomoko様

ありがとうございます。
『詩の住む街』の続編、期待しております。

投稿: panterino | 2008年6月21日 (土) 19時52分

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