《妖精ヴィッリ》
プッチーニの珍しいオペラ《妖精ヴィッリ》を観た(ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ劇場)。
変わった公演で、まず、ジュゼッペ・マルトゥッチという作曲家の交響曲第一番が演奏された。
この曲の初演は1895年にミラノでというから、プッチーニと同時代人の交響曲ということになる。
スメタナやドボルザーク、シベリウスを思わせる曲想のある交響曲であった。
休憩をはさんで、プッチーニの初期のオペラ《妖精ヴィッリ》。これは意外なことに、コンサート形式の上演だった。
舞台のうえに、オーケストラも歌手も合唱もいて、歌手は女性(チェドリンス)はドレス、ホセ・クーラとガブリエーレ・ヴィヴィアーニは、黒い礼服。
オケも良く鳴っていたし、三人の歌手も熱唱で、素晴らしかったのだが、それだけに舞台があればという思いが最初から最後まで頭を離れなかった。にもかかわらず、クーラは、人物になりきった情感を強く出した歌唱が曲想にはまり、最高の出来だった。
舞台の形が通常と異なったため、音の面でも、オケが強く響きすぎて、歌唱をさまたげるとまでは言わないが、バランスとして、やはり同一平面でなく、オーケストラボックスから鳴ってくれたほうが良いと思うことが何度かあった。
舞台装置はなく、後ろのスクリーンに抽象的な模様があり、時々変化するというもの。
ストーリーは単純で、クーラ演じるロベルトが、アンナ(チェドリンス)と愛を誓いあうのだが、都会に行ったらアンナのことをすっかり忘れてしまう。アンナは悲しみのうちに死ぬ。ロベルトは帰郷すると、妖精およびアンナの霊にたたられて死ぬ、という話である。
魅力的で耳に残るメロディーも多いので、もっと上演されても良い曲だと思った。
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