『ママは負けない』
これは日伊女性国際会議(11月23ー26日)の初日で、「労働の世界における女性」という表題で、映画とディスカッションが行われた。
まず、フランチェスカ・コメンチーニ監督、ニコラ・ブラスキ主演の『ママは負けない』(Mi piace lavorare--mobbing)を上映。モビングというのが、職場での「いじめ」なわけだが、この映画では、会社の経営陣が入れ替わり、ブラスキ演じるところのアンナという女性が、シングル・マザーで病気の父(施設に入っている)を抱えているのだが、リストラの対象として狙われている。
そのため、次々と彼女に不向きな職場、あるいは仕事のないポジションにつかされたりする。
彼女は、不満を抱えつつも、じっと我慢し、耐える。不愉快な日々を過ごす彼女は、娘から、いつも不機嫌なママのようになりたくないから、子供は産みたくないと言われたりする。
この映画は、5月の連休に毎年開催されているイタリア映画祭で2005年に上映された。二度観て、やはり、重いテーマを叙情的に撮っているという印象を受けた。
上映後のディスカッションは、「女性と仕事:法律による保護の限界」というテーマ。パネリストは、渥美雅子(弁護士)、岡本太郎(映画評論家)、 古賀太(朝日新聞文化事業部)、塩野七生(作家)、ジゼッラ・デ・シモーネ(労働法、ジェノヴァ大)、イレーネ・ビニャルディ(フィルムイタリア社長)、松本侑壬子(映画評論家)の7人。
渥美氏は、アンナは我慢しすぎたという説。塩野氏は、主婦や他人によって代替可能な職種の人には法的保護が必要であるが、作家のような自由業は別のカテゴリーであるという。また、正規雇用と非正規雇用の待遇の大きな差が問題でこの格差を縮めなければならないとも述べた。
ビニャルディ氏は、この映画はずっと悲しい物語だが、最後の部分だけオプティミスティックであると述べた。最後は、アンナが会社からの解雇勧告をはねつけ、裁判を起こし、1年後に賠償金を獲得して、新しい職場を得て、娘と旅に出るところで終わるのである。
デ・シモーネ氏が言うように、実際には、裁判を起こして、次の職場を獲得するのは、非常に困難なことで、この映画のようにうまくいくかどうかは不確かだという。
松本氏は、世界の映画で働く女性がどう描かれてきたか、またアメリカ映画の中でも、80年代、90年代と描かれ方がどう変化してきたかを解説。そうした中でも、コメンチーニのこの職場の描き方、また、シングルマザーの生き様の描かれ方は、傑出しているとのことだった。単に、がんばる母ではなく、職場・社会の問題として捉える視点が強く出ている点が、新しいのである。
このような映画が労働組合 Cgil の協力により、低予算で、女性監督により産出され得るというところに、イタリア文化の底力があるように思う。
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