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2006年7月 9日 (日)

『主人は浮気なテロリスト!?』

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リオ・フォ作『主人は浮気なテロリスト!?』(劇団俳優座LABO公演、六本木)を観た(7月17日まで)。

場所は俳優座であるが、5F稽古場。右手の入り口から入る。

舞台は小ぶりで、客席は階段状になっている。額縁舞台と異なり、役者が自分と同じ空間にいるという感じが強い。即ち、俳優・女優の身体性をいきいきと感じる贅沢な舞台といえよう。

主人公は、フィアットの社長ジャンニ・アニェッリとフィアットの熟練工アントニオ。これを堀越大史が一人二役の大熱演。

一人二役であるのには必然性がある。アニェッリが自動車事故にあい、それをたまたまアントニオが助けるのだが、混乱があって、顔がメチャクチャになったアニェッリはアントニオと誤認されたまま整形手術をうけ、アントニオの顔になってしまう。

アルド・モーロが誘拐され、暗殺され(1978年)てから間もない1981年に書かれたので、作品中で、アニェッリがこうしたいきさつで行方不明となってしまうと、テロリスト集団の仕業と疑われるのも無理はない。

ここから、アニェッリとアントニオをめぐって、妻と愛人が絡んで、どたばたがある。

特に、アニェッリは、手術後口の利き方が不自然という設定が、笑えるし、巧みな設定であると思う。妻は両者とも自分の夫と思っているのだが、観客は口の利き方で、ぎこちない方がアニェッリの方だとすぐ判るのである。

日本語で表現するのは困難であるが、おそらく原文では、労働者階級に属するアントニオの言葉遣いと、大ブルジョワであるアニェッリの言葉遣いには、明確な相違があるだろうし、ダリオ・フォはどう演じ分けたのだろうなどと連想がはたらいた。

アニェッリは2003年に亡くなったが、まだまったく元気な1980年代に、主人公として取り上げたのは愉快な話だ。

また、ジャンニ・アニェッリは女優などと数々の浮き名を流した色男でもあったが、このアントニオも妻と別居し、ルチアと暮らすのだが、事故当日は、別の女性組合員と一緒にいたという浮気者なのである。

ここからややネタバレです。

ジャンニ・アニェッリは、上顎・下顎も手術したせいで口の利き方が不自然で、医者が妙な言葉の練習をさせる。

また、食事も口からはとれず、漏斗や妙な器具を使って鼻から入れることになるのだが、これは見た目も可笑しいのだが、アニェッリがイタリア一の伊達男だっただけに、実に皮肉がきいている。

劇団側は、気をきかせて、座席にあらかじめ「!より楽しむためのキーワード!」というA4の表裏にアルド・モーロ暗殺事件やアンドレオッティ元首相、アニェッリのことなどを手際よく説明した紙を配布している。こうしたちょっとした工夫で、政治や風刺の翻訳ものも楽しめる幅が広がると思う。

しかし、作品の生命力は、実にたくましいもので、観客の中に小学生とおぼしき少女もいて、楽しそうに笑っていた。作者と役者たちにとって、最大の賛辞ではないだろうか。

ギャグのレベルでも楽しめ、身体的な動作のぎくしゃくでおもしろがり、イデオロギーや政治批判でにやっとすることが出来るダリオ・フォ。それが、大人から子供まで、様々なレベルで享受することができる舞台になっていたのである。

遠藤剛の警部は味があったし、川井康弘の医者は権威をふりまわし、ちょっと変態チックなところをうまくユーモラスに演じていた。

アントニオの妻ローザの美苗、愛人ルチアの勝恵も、対照的なキャラクター、意地の張り合いを見事に演じていた。

セリフより、動きで見せる看護人、警官、窓枠を持つ男など、ダリオ・フォらしい異化効果を、楽しく出していた。

こぶりな舞台も有利にはたらいていると思うが、怒鳴らないセリフまわし、着実な表情づけ、テンポの良さ、俳優座のレベルの高さに感心した。

一人二役になってから、ローザの家で、ジャンニとアントニオが交錯する場面、舞台回しも実に巧みであった。演出は高岸未朝。

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