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2006年4月20日 (木)

ピエロ・デッラ・フランチェスカの《キリストのむち打ち》

ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎の絵画《キリストのむち打ち》に、新たな解釈が提出された(コリエレ・デッラ・セーラ、4月13日)。

《キリストのむち打ち》の図像などは、http://www.italy-marche.info/jp/renaissance/pdf.html などで見ることが出来る。建物の奥で、一番左手にピラトが腰掛けていて、イエスが鞭で打たれている。後ろ向きの人物がそれを見ている。遠近法を強調した絵画で、前方に大きく三人の人物がいる。左の人物は、黒い帽子をかぶっている。真ん中の若者は、不思議な雰囲気を持っている。右端の人物は派手な柄の服を着ている。

この三人が誰なのか、またこの絵全体がどんな目的のために描かれたのかが謎で、さまざまな説がこれまで出されてきたのである。

今回、新説を出したのは、Silvia Ronchey で Rizzoli から L'enigma di Piero. L'ultimo bizantino e la crociata fantasma nella rivelazione di un grande quadro 「ピエロの謎ー最後のビザンチン人と偉大な絵が明らかにする幻の十字軍」(pp.538, 21ユーロ)が出た。

コリエレ紙からそれるが、日本では、昨年、石鍋真澄氏の『ピエロ・デッラ・フランチェスカ』(平凡社、4800円)が出た。ピエロ・デッラ・フランチェスカの出身地、出身階層、またその階層はどんな出世欲を持っていたかも含め、ロンギやケネス・クラーク、ギンズブルクをはじめ諸家の説を紹介しつつ、石鍋氏自身の説を打ち出す正当的かつ、決して専門家以外をはねつけない、一般読者にも開かれた中身の濃い本である。

石鍋氏の著書では、《キリストのむち打ち》については、第10章(237-272ページ)に取り上げられている。ここでも、石鍋氏は、ピエロだけでなく、フェデリーコ・モンテフェルトロの人となり、その宮廷の特徴を描いたうえで、作品の謎にせまっていく。

石鍋氏の自説については、ここではあえて省略するが、重要なのは、一般にこの絵が「東方教会の艱難という歴史的状況と対トルコ十字軍に関連づけて」考えられることが多いのに対し、石鍋氏は、そうではない説をとっているということだ。

さて、シルヴィア・ロンケイはどうなのだろう。彼女の説は、まさに主流派である東方教会の危機および十字軍と関連づけるものである。

まず1438年の、フェッラーラ・フィレンツェにおける東西両教会合同をめざした公会議から話ははじまる。ロンケイの解釈では、画面の奥、ピラトの格好をしているのが、パレオロゴス朝のヨハンネス8世で、彼は、フェッラーラでの公会議に代表団を率いてやってきた。

後ろ姿で描かれているのが、スルタン。むし打たれるイエスは、東方教会を表わす。コンスタンティノープルは1453年にトルコ人の手に落ちる。1459年には、ローマ教皇ピオ(ピウス)2世が、コンスタンティノープルの奪回をめざして十字軍を呼びかけるのである。

前方に大きく描かれた3人は誰か。左の帽子をかぶり、髭をはやした人物が、ベッサリオン。彼は、東方から公会議にやってきて、カトリックに改宗し、西方に残り、1459年のマントヴァでの公会議に出席する。

真ん中の若者は、パレオロゴス朝のトマスで、ヨハンネス8世の弟。ビザンティンを防衛する西方の援軍を待っている。

右端の人物は、エステ家のニッコロ3世。フェッラーラでの公会議の主人役である。1459年の公会議ではエステ家も十字軍参加を呼びかけられた。

結局、1459年の十字軍は、成立せず、ビザンティンも奪回できなかったわけだ。

(訂正:当初、Silvia Ronchey の名前を、ロンチーと表記していましたが、知人より問い合わせをうけ調べ直したところ、ロンケイであることが判明しました。ここにお詫びして訂正します。  ちなみに、シルヴィア・ロンケイは、シエナ大学で教鞭をとるビザンチン学者で  http://www.silviaronchey.it/index.html  というホームページを持っている。)

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